今回は、歯科医院が回収する「金歯」をテーマに、調査官がチェックするポイントを見ていきます。※本連載では、税理士・加藤武人氏の著書『ベテラン調査官はここを見てる―「対話方式による52事例」で読み解く!税務調査のチェックポイント集』(大蔵財務協会)の中から一部を抜粋し、事例をもとに、調査官が注目するポイントを紹介します。

買い取ってもらった金歯の代金 現金払いか振込みか?

〔調査事例〕

金歯1つでも資産価値、売却価値がある。調査官は、雑収入として収入に計上しているかどうかを確認する。

 

⑴生活用の預金口座を調べる

調査官は、総勘定元帳を見て「雑収入の内訳を見ますと、歯ブラシ代収入のほかに金歯代金とありますが、この金歯代金とはどのような取引でしょうか」と。

 

《院長》患者さんを治療した時に取り外した金歯です。一般的には、患者さんは取り外した金歯を持ち帰りたいという方はまれです。患者さんのほとんどは、当医院で処分してほしいと言われます。中には、記念に持ち帰りたいという方もいます。最近では、金歯相当額を値引きしてほしいという患者さんもいましたし、貴金属買い取り店に持ち込むのでほしいという患者さんもいました。

 

《調査官》貴院で取得した金歯はどのように管理していますか。

 

《院長》金歯は、専用の容器を準備しています。その容器に入れて保管しておきます。

 

《調査官》どのような容器ですか。また、その容器はいつ誰に渡していますか。

 

《院長》この容器です。金を仕入れている業者がありますので、その業者に引き取ってもらっています。引き取りは毎月1回程度です。

 

《調査官》金歯を材料業者が買い取っているということですね。ところで買い取った金歯の入金は現金ですか、振込ですか。

 

《院長》振込にしてもらっています。現金で入金すると領収書を発行することになり、面倒だし、現金管理も大変だからです。

 

《調査官》振込口座はどの口座ですか。

 

《院長》社会保険診療収入等の入金口座を使用しています。この口座1つですべての収入が把握できるようになっています。

 

《調査官》○○銀行○○支店・普通預金・口座番号○○○○○○○の口座ですね。

 

《院長》はい、その預金口座です。

 

《調査官》ちなみに生活用の預金口座はどちらの銀行をご利用ですか。

 

《院長》生活用の預金口座も同銀行同支店にあります。

 

《調査官》ご自宅はここから何キロぐらいですか。また、どのようなルートで通われていますか。

 

《院長》自宅は診療所から5キロ程度の場所にあります。ルートは○○街道を利用して通っています。

金歯1つでも申告漏れのないよう、振込にしてもらう

⑵金歯1つも申告対象収入

調査の現場では、金歯1つでも資産価値・売却価値があり買い取り価格があるので、雑収入として収入に計上しているかどうかを確認することとなります。

 

調査着手前に、取引先である材料業者に調査に入り、金歯の買い取り価格・買い取り量、買い取った場合の支払方法が現金か振込かを確認している場合もあります。

 

また、材料業者の支払方法が現金の場合、診療所では収入の計上が漏れやすいことに着目し調査にあたります。

 

振込の場合であっても本来診療で使用している預金口座を使用せず、近隣の銀行口座を別に開設して振込を依頼することも考えられます。

 

その場合を想定し、院長の自宅から診療所までの出勤経路を確認し、近隣で口座開設の可能性のある銀行口座を推測することもあります。

 

いずれにしても、金歯1つも申告対象収入となりますので、申告漏れのないよう振込にしておくこと、診療収入に使用している預金口座への振込が望まれます。

 

【税務調査のチェックポイント】

①金歯はどのように保管されている?

②金歯の容器はいつ誰に引き取ってもらっているか?

③金歯の入金は振込か現金か?

ベテラン調査官はここを見てる―「対話方式による52事例」で読み解く! 税務調査のチェックポイント集

ベテラン調査官はここを見てる―「対話方式による52事例」で読み解く! 税務調査のチェックポイント集

加藤 武人

大蔵財務協会

実際の税務調査の現場で進められる調査方法を「対話方式による事例」に基づいて、主に①調査官の聞き取り方、経営者の伝え方、②関係者への反面調査の視点、③業務プロセス(仕事の仕方)の3つの視点から分かりやすく解説しま…

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