今回は、新商品開発のためのサンプル購入という事例において、経費として認められるかどうかを見ていきます。※本連載では、税理士・加藤武人氏の著書『ベテラン調査官はここを見てる―「対話方式による52事例」で読み解く!税務調査のチェックポイント集』(大蔵財務協会)の中から一部を抜粋し、事例をもとに、調査官が注目するポイントを紹介します。

サンプルを廃棄しているのであれば・・・

〔調査事例〕

調査官は、サンプル購入したキッチン用品と事業との関係性の有無を確認するため、あらゆる角度から質問を投げかけてくる。

 

⑴サンプルを購入した後にどうするのか?

調査官は、概況のヒアリングにあたって「御社では、キッチン用品のサンプル購入が見受けられます。このサンプルはどのように活用しているのかをお聞かせください」と。

 

《経営者》これらのサンプルは、商品開発をするために重要なヒントとなります。デザイン・色・機能等を参考にしています。

 

《調査官》分かりました。ところで、これらのサンプルは誰が購入していますか。

 

《経営者》サンプルは、私が購入しています。また、通販やインターネットで購入することもあります。

 

《調査官》サンプルを購入した後に、これらのサンプルはどうするのでしょうか。

 

《経営者》新商品開発時にデザイナーと打合せするときこのサンプルを使用しています。サンプルや取材で撮った写真をもとに打合せすることもあります。コンセプトやイメージを伝えるだけでデザイナーに商品開発をしていただくこともあります。

 

《調査官》このような過程を経て商品開発が行われるのですね。ところで、サンプルはその後処分をするのですか、それとも保管しておくのでしょうか。

 

《経営者》サンプルは、廃棄することもあれば機能性を見るために自宅で使用することもあります。

 

《調査官》廃棄する場合は、処分事業者から発行された廃棄証明書のようなものは保存されていますか。

 

《経営者》廃棄した記録を残さなければならないとは知らなかったので、残していません。

誰がサンプルを購入したのかが重要

⑵サンプル商品の活用について記録する

調査の現場では、事業との関係性の有無を確認するために、あらゆる角度で質問をすることとなります。

 

この場合、誰がサンプルを購入したのかが重要となります。領収書の日付・住所・購入商品等から、サンプルとして活用される対象物かどうかを見極めることもありえます。

 

海外出張している期間であるにもかかわらず、購入日付が出張期間中であった場合、日々購入する店舗でサンプルを購入した場合等、個人的に使用するために購入した商品がサンプル商品の中に紛れることも予見できます。

 

なお、サンプル商品の購入の場合、本当にサンプルとして購入したのか、参考のために購入したのか、もしくは、個人的にも使用できるから購入しておこうと思って購入したものなのか、さらには、個人的に使用してみて良かったら商品企画の中に取り入れてみるものなのか、さまざまな状況が考えられます。

 

いずれにしても、これらの購入した商品がサンプル商品として購入したものなのか個人的な買い物なのかは、経営者本人が最も理解していますので、サンプル商品の購入にあたっては、商品化の有無にかかわらずどの点に興味を持ち購入したのか、企画ノートのようなものを準備し、企画内容・打合せの過程・参考にした商品等を記載した記録を保存することが期待されます。また、サンプル商品の廃棄にあたっては廃棄処分業者から発行された廃棄証明書を保存しておくことも必要なことです。

 

【税務調査のチェックポイント】

①キッチン用品のサンプルは誰が購入しているか?

②本当にサンプルとして活用されているかどうか?

③サンプルは購入した後に処分するのか、保管しておくのか?

④個人的に購入した商品がサンプル商品の中に紛れていないか?

ベテラン調査官はここを見てる―「対話方式による52事例」で読み解く! 税務調査のチェックポイント集

ベテラン調査官はここを見てる―「対話方式による52事例」で読み解く! 税務調査のチェックポイント集

加藤 武人

大蔵財務協会

実際の税務調査の現場で進められる調査方法を「対話方式による事例」に基づいて、主に①調査官の聞き取り方、経営者の伝え方、②関係者への反面調査の視点、③業務プロセス(仕事の仕方)の3つの視点から分かりやすく解説しま…

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