今回は、税務調査官が「土・日の領収書」を徹底チェックする理由について見ていきます。※本連載では、税理士・加藤武人氏の著書『ベテラン調査官はここを見てる―「対話方式による52事例」で読み解く!税務調査のチェックポイント集』(大蔵財務協会)の中から一部を抜粋し、事例をもとに、調査官が注目するポイントを紹介します。

コンビニ発行の領収書から判明する個人的支出の混入

〔調査事例〕

調査官は、原始記録(レシート・領収書)から事実関係を想像し、日常の行動から逸脱した行動がないかを検証し、反面調査を行う。

 

⑴調査官はどこを見ているのか?

税務調査の最終段階に入ると諸経費の調査に入ります。一昔前までは、証憑書綴(しょうひょうしょつづり)をながめながら「レシートがありますね。レシートでは発行者の店名表示もなく単なる数字の羅列なので領収書と同じようには扱えません」でした。

 

ところが、最近の調査では「領収書がありますね。領収書では、購入品名や数量が分かりません。金銭を受領した証明にはなりますが、購入した内容を証明するものではありません」。さらに、「レシートをわざわざ領収書に書き直してもらうのには、何か問題があるからではありませんか」となります。

 

⑵コンビニが発行する領収書の場合

「購入品名の分かるレシートを発行するコンビニで領収書をもらうのは不自然ですね」。

 

特に調査官がそう思うのは、証憑書綴に毎日のように少額の支出がある場合です。「土曜・日曜日のコンビニの領収書が頻繁にありますね」。取引の実態を詳細に見ていくと、個人的支出の混入が分かってくるのです。

 

調査官は、「土曜・日曜日の出勤は、1ヵ月に何回ぐらいでしょうか。休日の出勤ではどんなお仕事をされているんですか」と聞いてきます。

 

また、従業員がどのような業務を行っているのかを聞いてくることもあるでしょう。

 

従業員に直接聞くこともあります。

調査官は原始記録から事実関係を想像する

⑶デパートの領収書はすべてが分かる

「8月28日にはデパートが発行した8万円の領収書がありますが、ただし書きに雑貨代とあります。こちらの出金伝票では社内用消耗品と記載がありますが…。9月15日には同じデパートでカバン代5万円の領収書があり、出金伝票にはパソコン用バッグ5,000円×10個とありますね」。

 

デパートの領収書には、必ず通し番号が付番されていますので、デパートに調査官は出向き、どんなものを何個購入したかが分かることになっています。

 

調査官は、「デパートを反面調査した結果、雑貨代(社内用消耗品)8万円の実態はジュエリーですね。パソコン用バッグ(5,000円×10個)5万円の実態は、皮製カバン1個で贈答用ですね」。

 

これは、いうまでもなく役員賞与と認定されます。領収書には、①作成者の氏名または名称(仕入れ先の会社名)、②取引の年月日、③商品などにより課税資産等であること、④取引金額(消費税を含む)、⑤交付を受けた者の氏名または名称(販売先の会社名)が記載されているかを受領時に確認するようにしておくことが大切です。

 

調査官は、原始記録(レシート・領収書)からあらゆる角度で事実関係を想像していきます。日常の行動から逸脱した行動があるかないかを検証したり、また反面調査という手段も使えることも十分理解しておきましょう。

 

【税務調査のチェックポイント】

①土曜・日曜日のコンビニの領収書が多いはなぜか?

②従業員はどのような業務を行っているか?

③領収書のただし書きと出勤伝票の記載は合っているか?

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