今回は、税務上「使用人兼務役員」と認められない役員の調査事例について見ていきます。※本連載では、税理士・加藤武人氏の著書『ベテラン調査官はここを見てる―「対話方式による52事例」で読み解く!税務調査のチェックポイント集』(大蔵財務協会)の中から一部を抜粋し、事例をもとに、調査官が注目するポイントを紹介します。

調査官が「議事録や名刺」から調べることとは・・・

〔調査事例〕

調査官は、取締役会の議事録や名刺を入手して、税務上認められない使用人兼務役員となっていないかどうかを調べる。

 

⑴名刺の肩書を見て…

調査に訪れた調査官は、まずはじめに「会社概況」について尋ねることになります。その会社の組織や座っている座席の配置まで聞くこともあります。

 

ところで調査の途中で社長や経理担当者以外の人とも名刺交換をして、次のような会話をすることがあります。

 

《調査官》○○さん、この名刺の肩書には、専務取締役と書かれていますね。どのようなお仕事をされているんですか。

 

《〇〇さん》業務全般を見ています。特に、契約関係・従業員の採用と人事考課・従業員の管理を主に行っています。

 

《調査官》○○さんに賞与の支給が行われていますが、どのような基準で支給されていますか。

 

《〇〇さん》従業員の支給方法と同じ基準ですよ。それがどうかしたんですか。

 

《調査官》いや調査ですから聞いたまでです。ところで専務取締役になるのも大変なことですよね。

 

《〇〇さん》それほどのことではありません。

 

《調査官》でも会社のことを任せられているようですね。

 

《〇〇さん》ええ、社長から期待されていますので、責任をもって業務を行っています。

 

《調査官》専務になるにあたって、取締役会のようなものを開催しましたか。

 

《〇〇さん》取締役会とは名ばかりではありますが、会議の中で決まりました。

 

《調査官》その会議の議事録を、ちょっと拝見させてください。

損金算入されない専務取締役に対する賞与

このような会話の中で調査官は、〇〇さんの緊張した構えをリラックスさせながら、気持ちよく話をしていただけるように導いていきます。

 

もしかしたら、話し方次第では「議事録なんかありませんよ」と○○さんは答えるかもしれないところを協力的なムードの中で進めていきます。

 

⑵専務取締役の役員賞与は…

取締役会で地位を付与された専務取締役に対する賞与は、使用人賞与と異なり損金の額に算入されません。よって、○○さんの賞与は損金不算入となります。

 

ところで、税務上で使用人兼務役員として認められない役員は、同族会社以外では、社長、理事長、副社長、代表取締役、専務取締役、専務理事、常務理事、その他これらの者に準ずる役員や合名会社・合資会社の業務執行役員、監査役、監事です。また、同族会社で認定役員とされた場合には使用人兼務役員にはなれません。

 

法人税調査において、いかにしてスムーズに現状をヒアリングし資料収集するかが重要なポイントとなりますが、このケースの場合も議事録の提示がなかった場合や、名刺の入手ができなかった場合には、結果が異なっていたかもしれません。

 

【税務調査のチェックポイント】

①名刺の肩書はどうなっているか?

②専務になるに当たって取締役会を開催したか?

③専務に対する賞与が損金算入されていないか?

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    加藤 武人

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