「購入した衣装」を使用後どうするのか?
〔調査事例〕
調査官は、領収書から衣装の購入内容を把握できないため、衣装の現物と出演した番組と領収書を照合し、その実態を把握する。
⑴購入した衣装は使用後どのようにするのか?
調査官は、総勘定元帳の中から「マネージャーさん、○月○日に○○レコードで5,000円、○月○日に○○書店で12,000円の支払いをしています。この支払いは、領収書のただし書きを見ますとDVD代と記載してあります。DVD代とはどのような支出ですか。また、誰がどのような目的でDVDを購入しているのでしょうか。領収書だけでは、これらの判断をすることができませんので説明をしていただけませんか」と。
《マネージャー》これらのDVD代は、俳優本人がお店に出向いて購入しています。新作が出ると必ず購入をし、自宅にいるときでセリフ覚え以外の時間には必ず見ています。月に20本ぐらい見るときもあります。
《調査官》分かりました。ところで、これらのDVDは主にどのような内容のものでしょうか。
《マネージャー》主に映画ですね、邦画・洋画は問いません。また、テレビドラマも見ています。
《調査官》ところで、○月○日に衣装代160,000円の支払い、○月○日に衣装代300,000円の支払いをスタイリストに行っています。1年間にどの程度購入されていますか。また、購入した衣装は使用後どのように扱われていますか。
《マネージャー》ドラマの出演本数が影響します。ドラマの本数が多ければ購入数も増えます。バラエティーにも出演しますし1年間を通すと結構な本数になりますので、購入数も増えます。また、一度使用した衣装については、衣装部屋に保管していますがもう一度着ることは少ないと思います。
《調査官》一度使用した衣装は使用しないということは、いずれ処分しているということですか。
《マネージャー》はい、処分します。ただ気に入った衣装については、参考のためにとっておくこともあります。
領収書と衣装と出演番組を照合
⑵領収書と衣装と出演番組を照合
調査の現場では、領収書から衣装の購入内容を把握することはできません。よって、衣装の現物と出演した番組と領収書を照合し、その実態を把握することとなります。
この場合、第一に領収書と衣装部屋の衣装を照合し、続いて衣装と出演した番組との照合をすることも考えられます。
よって、購入した衣装と領収書が照合できるように、購入した衣装にはどの番組で使用したものかを記録しておくとともに、領収書にもその旨を記載しておくことが望まれます。
なお、購入した衣装にはどの番組で使用したかを識別できるように、衣装のネームタグに通し番号を付番し、この通し番号を番組出演明細書(プロダクションから発行される振込明細書)そして領収書に同様の番号を記載しておくことも工夫の1つとしてあります。
ところで、衣装の購入は、業務目的だけでなく個人的な服装の購入も混入しがちな支出です。個人的な服装代と事業上の衣装代とが混在しないようにするためにも、さまざまな工夫が望まれます。
業務上の支出か個人的な支出かはなかなか判断がつかず、個人的な支出とされた場合、現物給与となる可能性も考えられます。
個人事業の場合、家事関連費として事業所得上の経費から除外されることとなります。
【税務調査のチェックポイント】
①購入した衣装は使用後どのように扱われているか?
②購入した衣装はどの番組で使用したものか?
③衣装の購入は、業務目的だけでなく個人的な服装代も混入していないか?