実際の協議書の考え方
【 NG例】(税務署に否認されやすい)
・「母親の財産すべてを弟が相続する」
・数次相続の記載なし
・兄の相続を“なかったこと”にしている
→ 形式は整っていても、実態と不一致
【OKの考え方】
・母親の相続 → 兄、弟が相続人であったことを前提
・兄の相続 → 兄の相続分を弟が承継
・相続関係説明図で2つの相続を明確に分ける
税務署に否認された場合は?
もし、
・母親の相続を「弟ひとり」として申告
・兄の相続を飛ばした
場合、税務署はこう動きます
1. 相続関係を確認
2. 数次相続を認定
3. 兄の相続税を再計算
4. 2割加算を適用
5. 追徴税+延滞税
結果、「節税のつもりが、結果的に一番高い相続になった」という事態になります。
税理士・司法書士が説明しきれない理由
この問題が厄介なのは、
・法律
・税務
・登記
・実務の流れ
すべてが絡むからです。
・司法書士は「登記ができるか」
・税理士は「申告が合っているか」
をそれぞれ見ますが、
「相続全体をどう設計すべきか」までは見ないことが多いのです。
相続は「手続き」ではなく「設計」
このケースで本当に必要なのは、
・どう分けるか
・どう申告するか
・どこで税金が増えるのか
・何をすると否認されるのか
を事前に読み切ることです。
相続は、「終わったあとに後悔する」「知らなかったでは済まされない」 分野です。
相続で迷ったら、“誰に任せるか”を間違えないでください
数字だけを見て判断すると、必ず落とし穴にはまります。相続は、知っている人だけが損をしない世界です。
兄弟等分相続でも「全体最小」は実現できる
母親の相続は、
・兄 1/2
・弟(鈴木さん)1/2
の等分相続としました。
相次相続控除は使えません。兄の相続では、2割加算もかかります。
それでも、
・母親の相続で居住用の小規模宅地等の特例を適用して課税価格を大きく下げた
・その結果、兄の相続財産の“元”も圧縮された
ことで、2つの相続を通算した税負担は、最小限に抑えられました。
2割加算そのものは消せなくても、2割をかける“土台”は下げられる。これが、「全体で考える相続設計」です。
税理士は小規模宅地等の特例を適用していなかった
母親と兄は同居をしていましたが、父親は自宅の他にもう1つのマンションを所有しており、父親が亡くなった際に兄が相続しています。
兄の住民票は母親と同じマンションですが、税理士はセカンドハウスを兄の自宅として、母親とは同居していないと判断。結果、小規模宅地等の特例は適用できないという判断のもとに相続税の計算がされていました。
しかし、鈴木さんからヒアリングした結果、兄名義のマンションは家族の荷物置き場として利用されていて、兄が日常的に生活していたのは母親と同居するマンションだということでした。
母親とは同一生計で、郵便物も母親名義のマンションから届いていて、明らかに同居です。さらには兄名義のマンションはたまにしかいかないため、電気料金は基本料金だけ。生活していないという証明にもなります。
こうした事実から、税理士には小規模宅地等の特例を適用する計算をしてもらい、評価が下がりましたので、結果、母親の相続税は0となったのです。
最終的に鈴木さんは「2割加算は避けられないけれど、何も考えずに払うのとは、全然違うんですね。“全体で最小にする”という考え方が、目から鱗(うろこ)でした。結果、相続税が100万円以上も安くなって、助かりました!」と話しました。
今回のポイント
・相次相続控除が使えなくても、打つ手はある
・小規模宅地等の特例は、相続全体に影響する
・2割加算は消せなくても、“元の税額”は下げられる
・相続は「単発」ではなく「流れ」で考える
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
