土日休み=“気を遣う時間”になることも
もう一つ、美恵子さんが土日にあえて働く理由があります。それは、夫との距離感でした。
「土日休みだと、夫も家にいるでしょう。仲が悪いわけじゃないんです。でも、夫がいると、なぜか気が抜けない。ゆっくりできないんですよね」
さらに、気が重いのが東京都下で暮らす義母の存在です。
「土日に家にいると、『お母さんの様子を見に行ってほしい』とか、『ちょっと連絡してくれない?』とか、義母の世話を振られる可能性が出てくる。それが正直、面倒で……」
あえて土日に働くことで保たれる、夫婦のバランス
美恵子さんはこう考えています。
「この距離があるからこそ、夫婦関係もうまくいっている気がします。ずっと一緒にいる必要はない。お互いに、それぞれの時間があったほうがいい」
実際、夫が美恵子さんに何か頼みごとをしようとすると、次女が自然と援軍に回ることもあるそうです。
「『お母さん疲れてるんだから、お父さんそのくらい自分でやったら?』って言ってくれるんです。助かりますね」
子育て後も続く「家庭内の担い手」という感覚
子どもが独立すれば、自然と自由になれる。美恵子さんも、そう思っていました。
「でも実際は、“次は家族のサポート役”という空気が残る。役割がなくなるわけじゃなくて、形が変わるだけなんですよね」
日本労働組合総連合会(連合)が実施した「仕事と生活に関する調査」(2022年、回答者1,000人)によると、現在の就業形態として非正規雇用を選んだ理由については、「ある程度、労働時間・労働日を選べるから」が39.0%で最も多くなりました。次いで、「通勤時間が短いから」(24.5%)、「家事に時間が必要だから」(20.4%)、「正社員の働き方は過酷だから」(15.9%)、「育児や介護に時間が必要だから」(14.8%)と続いています。また、「女性の活躍」についてどのように思うかを尋ねた設問では、「女性だけに、働くことと家事・育児の両立を求める風潮に疑問を感じる」と回答した人が49.9%と最も多くなりました。
美恵子さんは短大を卒業後、一般企業に就職しました。職場で現在の夫と出会い、結婚を機に退職。その後は、パートなどの非正規の仕事を続けてきました。当時、正社員として働き続ける選択肢もありましたが、「子育てと両立していく自信がなかった」と振り返ります。
義両親は近所に住んでおり、日常的に用事を頼まれることもありました。さらに、子どもが小さい頃はPTA活動などで学校から呼び出されることも多く、時間の融通が利く働き方でなければ対応が難しかったといいます。
「私にとっては、パートという働き方がちょうどよかったんです」と、美恵子さんは当時を振り返ります。「そして今はその働き方が、いつの間にか自分のペースを守る手段になっているのはなんだか皮肉というか面白いなと思います」
「仕事は、私が私でいられる場所」
「働いていると、『今日は無理』って言える理由になる。第一お金も稼げる。仕事は逃げ場でもあるし、自分を守るための場所でもあります」
最寄り駅前の大型スーパーでのパートの仕事は、美恵子さんにとって単なる仕事ではありません。自分の時間を確保し、家族との距離を調整し、夫婦関係を穏やかに保つための手段でもあります。
子育てを終えた美恵子さんが、自分の人生を自分のペースで生きるために選んだ、静かな働き方でした。
[参考資料]
日本労働組合総連合会「非正規雇用で働く女性に関する調査2022」
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