「先生、これ……覚えていらっしゃいますか?」10年前に作成した相続プランの提案書を差し出したのは、葉子さん(仮名・70代)でした。ご主人が健在だった頃、不動産評価や相続税対策まで具体的に示されていたにもかかわらず、認知症の発症により準備は実行できないまま相続が発生。結果、相続税は3億円、子どもたちの負担は1億5,000万円超に及びました。なぜ「わかっていた対策」は間に合わなかったのか。葉子さんが再び相談に訪れた理由とともに、一次相続・二次相続に潜む落とし穴を、相続実務士・曽根惠子氏(株式会社夢相続 代表取締役)が実例で解説します。
もう一つの問題…葉子さんの「二次相続」
今回のご相談で、もう一つ大きな問題がありました。
それは、葉子さんご自身の相続(=二次相続)です。葉子さんは、ご主人の相続で会社の株式を相続しています。その評価額は、3億円以上。配偶者だったため、一次相続では 相続税の納税は不要でした。
しかし、問題はここからです。葉子さんが亡くなったとき、この株式を相続するのは、2人のお子さん。その時点では、 配偶者控除は使えません
つまり、
・一次相続では税金ゼロ
・二次相続で、子どもたちが
・再び多額の相続税を支払う
まさに、「夫の相続の二の舞」になる可能性が高い状況でした。
「私はまだ元気だから」と言った葉子さん
葉子さんは言いました。「私はまだ元気ですし、相続はまだ先の話ですよね?」
そのお気持ちは、よくわかります。
しかし、葉子さんご自身が一番よく知っているはずでした。判断できなくなる日は、本人にも予測できない
ご主人のケースが、まさにそうだったからです。
・体は元気そうに見えても
・ある日突然、判断能力が低下する
・その瞬間から、対策はできなくなる
だからこそ、葉子さんにははっきりお伝えしました。 「対策は、今です」
なぜ「今」やるべきなのか
・判断能力があるうちにしかできない対策がある
・会社株・不動産・資金の動かし方は本人の意思が不可欠
・子どもたちが再び高額な相続税で苦しまないため
これは、元気な今だからこそできる「親としての最後の仕事」です。
葉子さんの事例が教えてくれること
・相続設計は「知ったとき」ではなく「動いたとき」から意味を持つ
・認知症は、すべてを止めてしまう税理士=相続の正解、ではない
・二次相続まで見据えなければ、本当の相続対策とは言えない
葉子さんは、こう言われました。
「今度こそ、子どもたちに同じ思いはさせたくありません」
相続は、「まだ先」と思っている人ほど、突然、当事者になります。だからこそ、判断できる今が唯一のチャンスなのです。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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