「話せばわかる」はずだった――7年放置された“実家”
「私も、まさかこんなに長引くとは思いませんでした。解体費用は、もう私が一人で出してもいいから壊したいんです」
そう語るのは、千葉県在住の中村里美さん(仮名・52歳)。7年前に母が他界し、兄と2人で相続した埼玉の実家が、現在も空き家のまま手つかずの状態で残っています。
「母が亡くなった当時は『しばらくはそのままで』と兄妹で話し合ったんです。でも数年が経ち、老朽化も進みました。近所の方から『倒壊が心配だ』と連絡が来るようになって…私から解体を提案したんですが、兄は『まだ心の整理がつかない』と反対してきて」
感情的な部分が残っていても、空き家の放置には現実的なリスクが伴います。老朽化が進めば倒壊や雑草・害虫被害などで近隣から苦情が来るほか、「特定空家」に指定されれば固定資産税の優遇措置が外れる可能性も出てきます。
「兄は都内に持ち家があって、何もせずとも生活に支障はないようです。でも私は納税通知書を受け取り、年に何度も草刈りに通って…“あの家”を見るたびに、疲れ果てます」
里美さんの悩みの根本にあるのが、「兄妹での共有名義」です。
不動産を複数人で相続した場合、売却・賃貸・解体などの処分には原則として“共有者全員の同意”が必要です。1人でも反対すれば手続きが進まず、空き家のまま年月が経ってしまうという構造的な問題があります。
「父の遺言で“半分ずつ”と指定されていて、当時は『平等でいいことだ』と思っていました。でも、結果的にどちらかが処分を望んでもできないなら、単独相続+代償分割のほうが良かったのかもしれません」
このような「遺言や遺産分割の設計ミス」によって、何年も空き家が放置される例は珍しくありません。
