「孤独じゃないけど、少し寂しい時もある」
夕方、食事の準備をしていたときのこと。母が麻衣さんにぽつりとつぶやきました。
「近所にあまり人がいなくてね、日によっては誰とも話さないまま一日が終わるの。別に孤独じゃないけど、たまにちょっと寂しいな、って思うのよ」
母は父に遠慮して言っていないようでしたが、麻衣さんはその言葉が忘れられなかったといいます。
「父は楽しんでいるようだけど、母がそこにちゃんとついていけているかは、別の話なんだなと」
地方移住そのものが悪いわけではありません。実際、住宅費の負担が軽くなり、通院や買い物の不便さも地域によっては行政支援が充実しているところもあります。
帰り際、父は「またいつでも来いよ。野菜、今度こそ自信作だ」と笑っていました。麻衣さんも笑顔で応えつつ、ふと考えたといいます。
「好きなことがあるのは素敵なこと。でも、それを続けられるのは、支えてくれる誰かがそばにいるからじゃないかって。母がいなかったら、父は本当に自由に暮らせているのかな…って」
今、麻衣さんは月に一度、両親に電話をかける習慣を作っています。「何かあったとき」に連絡するのではなく、「何もなくても声を聞く」ための時間です。高齢者の“幸せな老後”は、資産や経済的事情だけでは測れません。“自由”と“孤立”は紙一重であり、元気に見える人でも、ふとした瞬間に孤独を抱えていることもあるのです。
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