「おまとめローン」という名の甘い罠
いつしか借入れ先は5社に増え、返済管理が手に負えなくなった24歳のころ、佐藤さんは事態を収束させるべく、銀行の「おまとめローン」に手を出しました。バラバラだった負債を一本化し、月々の返済額を抑えることで、完済への道筋を立てるつもりだったのです。
「あのときは、これで人生をやり直せる、と本気で安堵しました。しかし、それが地獄の第二幕の幕開けでした」
借金を一つにまとめたことで、それまで使っていた複数のクレジットカードの利用枠が、一瞬にして「空」になりました。本来であればそのカードを解約すべきでしたが、佐藤さんは「もしものため」と手元に残してしまいます。
空いた枠を目にした瞬間、彼の脳内では「また自由に使える金ができた」という致命的な錯覚が起こりました。おまとめローンの返済を続けながら、空いたカードの枠を再び日常的に使い込み……。
気づいたころには、佐藤さんの年収にも匹敵する総額490万円にまで負債が膨れ上がっていたのです。
「利息を払うために生きている」出口が見えない支払い地獄
25歳になった佐藤さんは今、ようやく己の過ちに気づき、真面目に返済と向き合っています。かつての浪費を一切断ち切り、食費を削り、趣味も捨て、借金返済に捧げる毎日を送っています。
現在の手取りは昇給や残業で30万円まで増えましたが、そのうち18万円が毎月引き落とされていきます。内訳は、車のローンが7万円。そして借金の返済が11万円です。
毎月欠かさず、11万円を借金返済に充てているにもかかわらず、元金は驚くほど減りません。なぜなら、およそ6万円が利息のみで消えており、実際に減っている借金は5万円弱にすぎないからです。
「11万払っても、そのうち6万は利息。借金は5万くらいしか減ってないんです。本当、気が遠くなります。毎日あんなに必死に働いて、結局これだけかよって。なんのために頑張ってるのか、わからなくなります……」
かつて「同年代の奴らには負けない」と豪語していた佐藤さんは、まるで“利息を払うためだけに働くマシーン”のように、返済に追われる日々を淡々と過ごしています。
日本信用情報機構(JICC)の「統計資料」によると、借入残高がある者のうち、20代(約11%)と30代(約18%)を合わせた働き盛り世代が全体の約3割を占めています。
また、金融広報中央委員会の「金融リテラシー調査」では、クレジットカードの利用に伴うリスクを正しく理解している人は、回答者の49.6%に留まっています。こうした知識の不足が、おまとめローン後の「空き枠」を資産と錯覚させ、再び借金を増やしてしまう要因となり得ます。
佐藤さんの事例は、金融教育の不十分さと自制心が育ちきっていない若者に「借金」というアクセルだけを渡してしまう、現代社会が抱える深刻な課題といえるでしょう。
[参考資料]
指定信用情報機関 日本信用情報機構(JICC)「統計資料(2025年版)」
金融広報中央委員会「金融リテラシー調査(2022年調査)」
