米国最高裁が握る「トランプ関税」の行方――メキシコ経由ビジネスと日本企業への波紋【国際税務の専門家が解説】

米国最高裁が握る「トランプ関税」の行方――メキシコ経由ビジネスと日本企業への波紋【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

2026年初頭、米国最高裁が下す判断が、世界の貿易構造を左右しかねません。争点となっているのは、トランプ関税が1977年国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、大統領権限で一方的に課されたものとして合法かどうかという点です。仮に違法と判断された場合、最大1,300億ドル規模の関税還付が生じる可能性も指摘されています。この判決は、メキシコに多数進出する日本企業を通じて、日本経済にも間接的な影響を及ぼす可能性があります。『富裕層が知っておきたい世界の税制【大洋州、アジア・中東、アメリカ編】』の著書である矢内一好氏が詳しく解説します。

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米国とメキシコを結ぶ生産分業の仕組み

米国がメキシコに注目してきた背景には、低賃金で豊富な労働力の存在があります。一方、メキシコ側にとっても雇用拡大が見込めることから、両国にとってウイン・ウインの政策として、1965年にマキラドーラ(Maquiladora)制度が創設されました。

 

この制度は、米国とメキシコ間の関税などに優遇措置を設け、国境地帯に工場を誘致し、組み立てなどの工程をメキシコで行った上で米国に輸出することを目的としたものです。当初は米国企業向けの制度でしたが、自動車産業を中心に、日本企業など米国以外の企業も広く活用するようになりました。

 

要するに、米国内に加工工場を建設する代わりに、メキシコの低賃金労働力と、原材料・製品を保税のまま国境通過できる仕組みを活用するモデルです。現在では、この制度は国境地域に限らず、メキシコ国内の他州や中南米諸国にも広がっています。

IMMEX制度と税制優遇の変遷

従来のマキラドーラ制度は、2006年に公布されたIMMEX政令により簡素化・統合されました。

 

IMMEXとは、「輸出向け製造・マキラドーラ・サービス産業(Industria Manufacturera, Maquiladora y de Servicios de Exportación)」を意味します。かつては「Maquiladora Companies」と呼ばれていましたが、現在では「IMMEX Companies」という名称が一般的です。

 

マキラドーラ企業に対しては、2008年1月から施行された、所得税と資産税を統合した企業単一税が免税とされていましたが、この税制は2013年の税制改正により廃止されました。

 

その後の優遇措置として導入されたのが、いわゆるセーフハーバー制度です。これは、主として米国などの外国企業から原材料や機械設備の貸与を受けて操業するマキラドーラ企業に適用される特別な課税ベースで、

・操業に供される固定資産総額の6.9%

・操業費用総額の6.5%

のいずれか大きい方を課税所得として計算します。

 

なお、この算定にあたっては、移転価格税制のルールは適用されません。

トランプ関税の行方が左右する日本企業の戦略

トランプ関税を巡る問題は、まず米国最高裁の判断という大きな関門を迎えます。仮に、同関税が存続する場合、米国とメキシコの関税交渉は、メキシコに進出する日本企業にとっても無視できない重要テーマとなるでしょう。

 

アメリカとメキシコの関係の変化は、単なる二国間問題にとどまらず、北米を生産・輸出拠点とする日本企業の事業戦略やサプライチェーン全体に影響を及ぼす可能性があります。最高裁判決の行方は、今後の国際貿易と企業行動を占う試金石となりそうです。

 

 

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

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