2月の確定申告に向けて、1年間の帳簿を整理している人も多いでしょう。この時期になると、「思ったより利益が出てしまった、なにか買って経費にしよう」といった悩みも増えてくるころです。しかし、企業財務の視点からいえば、その判断は危険です。本記事では、山根社長(仮名)の事例とともに、経営者が陥りやすい“節税の罠”について、資産形成・経営アドバイザーの萩原峻大氏が解説します。※本記事で紹介する事例は、実際にあった出来事を基にしていますが、個別事案が特定されないようプライバシーに配慮し、登場人物や具体的な状況に一部変更を加えて再構成したものです。

ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中! 

データで読み解く「日本経済」のリアル【エンタメ・スポーツ・事件編】
宅森昭吉(著)+ゴールドオンライン(編集)

データで読み解く「日本経済」のリアル【季節&気象・マインド・おもしろジンクス編】
宅森昭吉(著)+ゴールドオンライン(編集)

富裕層の資産承継と相続税 富裕層の相続戦略シリーズ【国内編】
八ツ尾順一(著)+ゴールドオンライン(編集)

 

シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!

 

節税は成功したはずが…

税理士は、前年と今年の帳簿を並べて提示しました。指差しているのは“期末時点の現金残高”の欄です。

 

昨年は、2,400万円。 決して余裕があるとはいえませんが、“次の一手”を打てるだけの金額でした。 しかし今年は550万円。

 

「……あれ?」社長の喉が、小さく鳴りました。「……こんなに、使った覚えはないんですが」

 

「節税は、確かにできています」税理士は淡々と続けます。「ですがその代わりに、会社の“体力”がほぼ削り切られています。今期の経営に必要な現金は足りますか?」

 

節税は成功しているのに、動かせる現金がない。その違和感が、はっきりと形を持って社長に突き刺さりました。

税金より怖いもの…“いつもの融資”が止まるとき

しばらくして、山根社長は、いつものように銀行へ電話をかけていました。

 

「いつもお願いしている運転資金の件なのですが……」

 

銀行員は電話の向こうで、一瞬、言葉を選んでいる様子でした。

 

「今回は見送りになる可能性があります。仮に融資実行できたとしても条件はかなり厳しくなると思います」

 

社長は、言葉を失いました。銀行員は、決算書を確認しながら事務的に理由を述べます。

 

「直近決算で、手元資金が月商の半月分も残っていません。正直にいって、“なにかあったら耐えられない会社”という評価になります」

 

山根社長は節税によって信用を失ってしまったことを理解しました。銀行からみれば、体力のない会社に貸したいわけがありません。

 

このときはじめて、山根社長は気づいたのです。会社を評価するのは節税額ではない。「残っている現金」こそが、会社の評価なのだと。

「節税額」よりも大切なこと

筆者はこの手の話を聞くたびに、確信することがあります。節税が上手な会社より、現金を残せる会社のほうが圧倒的に強い、ということです。

 

経営において、支払う税金の多寡は、本質ではありません。会社の生死をわけるのは、「いまこの瞬間に、いくら自由に動かせる現金があるか」です。

 

筆者自身、決算をみるときにまず確認するのは、当然ながら節税額ではありません。

 

・月商の何ヵ月分の現金が手元に残っているか

・想定外が起きても、即座に動ける余力があるか

・銀行から「次も貸したい会社」とみられているか

 

みるべきポイントは、この3点に尽きます。

 

多少税金を多く払ってでも、銀行が黙って融資枠を提示してくれる決算が望ましいでしょう。なぜなら、現金は“選択肢そのもの”だからです。

 

現金があれば、チャンスが来た瞬間に踏み込めますし、失敗しても立て直せます。判断を焦る必要もありません。逆に、節税で現金を削り切った会社は、選択肢が消え、判断が鈍り、「本当はやりたいけど無理」という場面が増えていくでしょう。

 

木を見て森を見ず。節税という一本の木に囚われ、会社全体という森を自分で枯らしているだけです。それは経営でも、戦略でもなく、ただの自己満足に過ぎません。

 

目先の節税で現金を使い果たしてしまえば、本当の勝負どころで手も足も出なくなります。未来を買うための体力を、過去の税金減らしで消耗してはいけないのです。

 

最後に、ひとつだけ問いを残します。

 

もし明日、突然チャンスが訪れたとき。あなたの会社は、「やりたい」ではなく「やる」といえるでしょうか?

 

 

萩原 峻大

東京財託グループ 代表

 

 

注目のセミナー情報​​

【国内不動産】1月27日(火)開催

【経営者必見!】
カトープレジャーグループ加藤宏明社長が語る
軽井沢を面で捉える開発・運営戦略と
唯一無二の別荘オーナーライフスタイルの全貌

 

【減価償却】1月29日(木)開催

【中小企業経営者のための決算対策セミナー】
生成AI時代の巨大インフラ
GPUサーバー・データセンターの活用メリット

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

※本連載は萩原峻大氏による書き下ろしです。

カインドネスシリーズを展開するハウスリンクホームの「資料請求」詳細はこちらです
川柳コンテストの詳細はコチラです アパート経営オンラインはこちらです。 富裕層のためのセミナー情報、詳細はこちらです 富裕層のための会員組織「カメハメハ倶楽部」の詳細はこちらです オリックス銀行が展開する不動産投資情報サイト「manabu不動産投資」はこちらです 石福金属工業のお知らせ エンパワー2月5日セミナーへの誘導です 不動産小口化商品の情報サイト「不動産小口化商品ナビ」はこちらです 特設サイト「社長・院長のためのDXナビ」はこちらです 一人でも多くの読者に学びの場を提供する情報サイト「話題の本.com」はこちらです THE GOLD ONLINEへの広告掲載について、詳細はこちらです

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧