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なぜ国税は富裕層を狙い撃ちにするのか
税務調査は、当然ながら費用対効果が重視されます。
低所得者の場合、仮に申告漏れが見つかっても税率は10%前後にとどまり、追徴額も限定的です。
一方、年間所得が4,000万円を超える層では、所得税率45%に住民税率10%が加わります。ここに過少申告加算税や延滞税が上乗せされるため、1件当たりの追徴税額は極めて高額になります。国税庁が富裕層に重点を置くのは、合理的な判断といえます。
「富裕層」の定義はすでに変わっている
かつて富裕層は、所得額や資産額といった「数字」で語られることが多くありました。しかし現在、国税庁は別の基準を用いています。
具体的には、
・経常的な所得が特に高額な個人
・海外投資を積極的に行っている個人
といった資産構成や投資行動に着目しています。
昨年度、こうした富裕層を対象に行われた所得税調査は2,427件に上りました。その結果、1件当たりの申告漏れ所得額は3,449万円という高水準に達しています。
海外投資を行う富裕層は「別格」の数字
さらに注目すべきは、海外投資を行っている富裕層に限定した調査結果です。この層では、1件当たりの申告漏れ所得額が6,680万円に達しました。一般的な調査と比べると、実に5〜6倍という水準です。
円安の影響もありますが、それ以上に、海外投資に関する申告の複雑さや認識不足が、巨額の申告漏れにつながっていると考えられます。
AIは何を見て「怪しい」と判断するのか
国税庁は、AIを活用したデータ分析によって、申告漏れの可能性が極めて高い納税者を抽出しています。その判断の軸となるキーワードは、次の4つです。
・海外投資
・インターネット取引
・無申告(特に海外所得)
もっとも、AIだけで機械的に調査対象を決めているわけではありません。AIの分析結果に、調査官の経験や知見を組み合わせることで、より精度の高い調査選定が行われているとされています。
「海外資産は見えない」という時代は終わった
海外投資をめぐる国際的な税務規制は、年々強化されています。国外送金等調書、国外財産調書、出国税(国外転出時課税)など、制度面でも監視の網は確実に広がっています。それにもかかわらず、海外脱税で摘発されるケースの多くは、「海外の資産なら税務署には分からないだろう」という安易な認識に基づいています。
これからの時代、海外投資を行う富裕層にとって最も重要なのは、早い段階で国際税務に精通した専門家へ相談することです。適切な申告と管理を怠れば、追徴課税だけでなく、社会的信用や名誉という、金額では測れない損失を被るリスクもあります。
AI時代の税務調査は、すでに始まっています。「知らなかった」「昔は大丈夫だった」という言い訳は、もはや通用しません。
奥村 眞吾
税理士法人奥村会計事務所
代表
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