制度導入は増えても参加率は約20%にとどまる
インターンシップ制度は1960年以降、アメリカにおいて、大学の教育が実社会に適応できていないと疑問視され始めたことにより確立しました。1970年代には政府の支援もあり大学、企業、学生の間に広く浸透していきました。
日本では1990年代後半に関東圏でインターンシップ推進モデル事業が開始され、関東経済産業局の呼びかけのもとに産業界、教育関係者が集まり、2001年に「関東地域インターンシップ推進協会」が発足しました。
その後2007年には、「特定非営利活動法人(NPO法人)日本インターンシップ推進協会(JIPC)」に改組し、全国の大学や各種学会、行政と連携しながらインターンシップの推進を図っています。
近年では、大学の正規の科目にも組み込まれ、インターンシップに参加することで単位を取得できる場合も増えています。文部科学省によると2014年度に、インターンシップを単位認定している大学(学部・大学院)は566校(72.9%)、前年度の542校(69.8%)と比較すると24校(3.1ポイント)増加しています。
また単位認定の有無にかかわらず、全体数でいうとインターンシップを導入している大学は合計740校(95.4%)にも広がっており、今ではほとんどの大学でインターンシップ制度が取り入れられています。
一方で学生の参加率は全体の20.7%にとどまっており、8〜9月の夏期休暇中が多く、期間でいうと最も多いのは1~2週間未満という結果になっています。
インターンシップには1日〜数週間の「短期インターンシップ」と数カ月~1年以上に及ぶ「長期インターンシップ」の2種類があります。私の会社で活用しているのは、夏期休暇中などに実施される短期の体験ではなく、6カ月間の長期インターンシップです。この期間の違いが、学生の生み出す成果に大きく差をつけます。
現時点で参加者が多いのは短期インターンシップ。拘束時間が短く、短期間で自分の気になる業種や会社について学べるのが魅力です。
[図表]単位認定を行うインターンシップの状況
体験を通して、業界・会社について知ることができる
一方、長期インターンシップはその会社の社員と同じように8時間活動する場合や、アルバイトのようにシフト制の場合もありますが、短期に比べると社員と接する時間が長く、その業界のことや会社について体験を通して知ることができます。
卒業後にその業種への就職を希望するなら、業界の基礎知識が身につき、他の就活生よりも一歩リードできるでしょう。もしその企業に入社が決まれば、1年目から即戦力として働くことができます。
もちろん、早い段階から業界を絞っている学生ばかりではありません。「働く意義」や「社会とは」といったことがよく理解できず、じっくり考えたいと思って参加する学生もいます。あるいは、就業体験をきっかけに自分が志望していたのとは全く別の業界に興味を持つようになったというケースもあるでしょう。
たとえその業界に就職しなくとも、一定期間、会社に通って経営者や社員と接することで、「働く」ということについてのぼんやりとしていたイメージがしっかりとした輪郭を持ち始めます。数カ月通えば最低限ビジネスマナーは身につきます。たとえ全く違う業界へ就職することになっても学生にとっては貴重な経験となります。
ただ、一定期間、企業へ通う時間が必要ですから、事前に単位をしっかり取るよう促したり、テスト期間中は学業に支障をきたさないよう活動時間を調整する必要があります。こういった学生側の都合に配慮するのも、受け入れる企業側の責任です。