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一人で子どもを育てた母の、ささやかな老後
78歳のAさんは、早くに夫を亡くし、女手一つで息子を育て上げました。夫が亡くなったことによる遺族年金と合わせて老後の収入の柱となる公的年金は約120万円、月額にしてわずか10万円ほどです。
夫が亡くなった際に団体信用生命保険で住宅ローンはなくなりましたが、光熱水費や食費等、日常生活にかかる費用を支払えば、10万円はあっという間になくなってしまいます。息子が学生のころは、奨学金を利用してもらい、Aさんはパート勤めをして家計を支えていました。
息子は大学卒業後、無事に中小企業へ就職。その後、30歳のときに結婚が決まり、まもなくして子どもが生まれました。Aさんにとって初孫の誕生は、なによりの喜びでした。
しかし、息子は就職後も奨学金の返済を抱えており、過去にAさんがケガで働けなかった時期には仕送りをしてくれていたこともあって、結婚時の息子の貯蓄額に影響してしまったのです。そのことを気にしていたAさんは、仕事に復帰してから退職するまで質素倹約の生活を貫き、身を削って働いてきました。
現在、Aさんと息子家族は離れて暮らしていますが、必ずお正月には家族で年始の挨拶に来てくれます。
ある年のお正月のことでした。孫が「塾に通いたい」といいだしたのです。いまの息子には住宅ローンの支払いがあり、奨学金の返済も残っています。家計の厳しさを察したAさんは、ついこういいました。
「おばあちゃんが塾代をだすから、安心して」
「孫のためなら」老後の楽しみを捨ててパート復帰
実はこのとき、Aさんは体力の限界を感じて仕事を辞めたばかり。「これからは老後をゆっくり過ごそう」と決め、近所の公民館で安価なヨガ教室に通いはじめたところでした。少し蓄えもでき、自分ひとりなら年金のみで生活を賄っていけそうだと安堵していた矢先の出来事です。
Aさんが負担することになった塾代は、毎月2万5,000円。さらに夏期講習などの臨時費用もかかります。Aさんは泣く泣くヨガ教室を辞め、再びパートに出る決意を固めました。 息子はAさんの懐事情を知っているため、「無理しないでいいよ」と気遣ってくれましたが、「孫との約束だから」と、老体に鞭を打って働くことにしたのです。

