「ここなら安心」――住み替えを決めた理由
「もう戸建てはしんどくてね。階段も庭も、気づいたら“やらなきゃ”が増えていくんです」
そう話すのは、首都圏に暮らす元会社員の西岡孝之さん(仮名・75歳)と妻の恵子さん(仮名・73歳)。子どもは娘が1人。娘夫婦は同じ都内に住み、仕事と子育てで忙しい日々を送っています。
夫婦が手放したのは、郊外の戸建て。築30年を超え、屋根や外壁、給湯器など修繕の話が立て続けに出てきました。特に冬場は負担が増えます。
「夜中に物音がすると怖くて。防犯カメラを付けても、結局“自分たちで管理する”ってことは変わらないんですよね」
そこで検討したのが、駅近のタワーマンションでした。コンシェルジュがいること、オートロックや管理体制が整っていること、何より病院やスーパーが徒歩圏内にあることが決め手でした。
「“ここなら最後まで住めるかもしれない”と思ったんです」
西岡さん夫婦の年金は、企業年金を含めて月32万円ほど。現役時代の貯蓄もあり、住み替え費用は戸建ての売却代金と手元資金で賄いました。
「年金もあるし、身の丈の範囲で選んだつもりでした。むしろ、老後は“快適さにお金を払う”のが正解だと思っていた」
ところが入居後、家計をじわじわ圧迫したのは、住まいに紐づく固定費でした。
管理費、修繕積立金、駐車場代、共用施設に関わる費用。加えて、住み替え後に発生した家具家電の買い替えや、細かなオプション費用も積み重なります。
「戸建てのときは“壊れたら直す”だったけど、マンションは毎月必ず出ていく。これが思ったより効きました」
さらに、マンション特有の“見えない負担”もありました。規約による制限、近隣への配慮、管理組合の議題――「自由に暮らす」というより、「ルールの中で暮らす」感覚です。
「悪いことじゃない。でも、“気が楽”だと思っていたのに、別の種類の気遣いが増えた感じでした」
