中流家庭の28歳女性「中国に帰ることはもう考えていません」…日本の永住権は「美大」で買える? 中国人留学生が殺到する“ガバガバな認定ハードル”の衝撃

中流家庭の28歳女性「中国に帰ることはもう考えていません」…日本の永住権は「美大」で買える? 中国人留学生が殺到する“ガバガバな認定ハードル”の衝撃
(※写真はイメージです/PIXTA)

出入国在留管理庁の調査によると、日本に在留する中国人は2025年6月末時点で約90万人に達している。2026年には100万人を突破する見通しのなか、日本では「中国人留学生」が急増し、とりわけ「美大」への集中が目立っている。この背景には、2017年に日本政府が実施した永住権取得までの大幅な要件緩和があるという――。日本経済新聞取材班『ニッポン華僑100万人時代 新中国勢力の台頭で激変する社会』(KADOKAWA)より、「日本の永住権」を取り巻く現状を、複数のデータや証言とともに紐解く。※登場する取材協力者の肩書や年齢は取材当時のものです。

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コロナの影響で帰国も、あきらめ切れなかった日本への思い

出所:出入国在留管理庁の公表資料を基に日経が作成。2025、26年は予測
[図表2]2026年、在留中国人が100万人突破の見込み 出所:出入国在留管理庁の公表資料を基に日経が作成。2025、26年は予測

 

「ずっと日本に憧れがありました。このまま日本に住み続けたいです」

 

2024年10月、京都市郊外にある私立の京都芸術大学。同大大学院でゲームなどのキャラクターデザインを学ぶ2年生の中国人女子留学生、李雅霖[リーヤリン]さん(28)に、日本に留学した理由をたずねると、すぐにこんな言葉が返ってきた。

 

李さんは中国南部の中核都市、広東省広州市の出身。両親と10歳年下の弟との4人家族で、いわゆる中流家庭に育った。

 

幼い頃からポケモンなど日本のゲームに夢中になっていたといい、日本への強い憧れから、中学校に入ると、「英語の勉強をしっかりするように言う母には内緒で、日本語の勉強ばかりをしていました」と、李さんは話す。

 

そんな彼女は中国の大学を卒業後の2019年、いよいよ憧れの日本への留学を決める。だが、運には見放された。東京の語学学校で本格的に日本語を学び始めようとしたところ、まさかの新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われた。李さんは、すぐに帰国を決めざるを得なかった。

 

帰国後、地元の広州市にあるゲーム会社に就職し、イラストを描く仕事に就けたまでは、まだ良かった。だが、とにかく残業が多い会社で、「やることがあまりなくても、なぜか社内にダラダラと残る社員が多く、私も毎朝9時から夜9時までは、仕方なしに会社に残っていました」と、振り返る。

 

「中国の企業は、本当に生産性が低いと思いました。私にはとても理解できませんでしたね」

オンラインで大学院試験を受験、再び叶えた日本での学生生活

そんな思いを抱えながら、李さんは約1年間、悶々とした日々を中国で過ごす。だが、彼女はどうしてもあきらめ切れなかった。考えた末、再び日本行きを目指す。

 

そして新型コロナの収束を待ちながら、中国からでもオンラインで受けられた京都芸術大学の大学院試験に見事合格。2023年4月から京都での学生生活をスタートさせた。

 

「中国にいた頃は、少し考え方がネガティブになっていました。それが日本に来てからは、日本で働きたいという明確な目標ができ、考え方がすっかりポジティブになりました」。李さんは中国で過ごした日々を振り返りながら、目を生き生きと輝かせた。

 

「私には日本の生活が合っています。自分で描いたゲームキャラクターを将来、世の中に送り出すのが今の夢です」

 

大学院修了をにらみ、2024年から始めた就活では、日本のゲーム会社ばかりを10社ほど受けたという。その中から、内定をもらった東京のゲーム会社で働くことが決まり、李さんは「ずっと日本で働きたいです。中国に帰ることはもう考えていません」と明かした。

 

なるほど。ここまでの話なら、世の中にはまあ、そんな中国の若者もいるだろう、で終わってしまう。だが「本題」はやはり、ここからだった。

 

日本に来て、2年余りとまだ日も浅い、李さん。だが、早くも視野に入れているのは日本での「永住権」の取得であると、彼女は明かした。

 

ようやくここで、あの埼玉の移住支援エージェントの女性担当者が口にした、キーワードが登場した。美大人気と永住権の関係である。そして李さんのその後の話と、取材班の調べを重ね合わせると、次から次へと芋づる式に色々なことが分かってきた。

 

次ページ中国人留学生が狙う「高度外国人材」

※本連載は、日本経済新聞取材班による著書『ニッポン華僑100万人時代 新中国勢力の台頭で激変する社会』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

ニッポン華僑100万人時代 新中国勢力の台頭で激変する社会

ニッポン華僑100万人時代 新中国勢力の台頭で激変する社会

日本経済新聞取材班

KADOKAWA

豊富なデータ分析・実名報道で移民問題に光を当てるノンフィクション! 第2回国際文化会館ジャーナリズム大賞受賞連載をもとに書き下ろし。 「我々は日本の中に今、広がる「中国」を可視化することにした。中国人のコミュ…

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