実地調査は減少、簡易な接触は大幅増
令和6事務年度(令和6年7月から令和7年6月)に実施された所得税調査では、実地調査の件数が4万6,896件で、前事務年度に比べて1.3%減少した。一方で、「簡易な接触」は、更正の請求等に基づく減額更正や、添付書類未提出に対する提出依頼などを含め、68万9,440件(23.7%増)と大幅に増加している。
その結果、実地調査と簡易な接触を合わせた調査等の合計件数は、前事務年度より13万1,259件増加し、73万6,336件となった。
これは、国税庁が現場に赴く実地調査を無差別に行うのではなく、データ分析を前提に、より効率的な調査手法へと重心を移していることを示すものといえる。
非違件数と追徴税額は過去最高水準
調査等の結果、申告漏れなどの非違が認められた件数は、前事務年度より5万7,463件増加し、36万8,727件(18.5%増)に達した。これにより追徴税額は1,431億円(2.4%増)と過去最高水準となっている。
注目すべきは、実地調査件数が減少しているにもかかわらず、追徴税額が増加している点だろう。これは、調査対象の選定精度が向上し、調査の実効性が高まっていることを示唆している。
調査選定におけるAI活用の効果
国税庁は、申告漏れの可能性が高い納税者の選定にAIを活用しているとしており、その結果として、
・実地調査件数の減少
・1件当たり追徴税額の増加
・簡易な接触における非違件数の増加
といった傾向が表れている。
AIは、申告データや過去の調査結果、業種別の傾向などを横断的に分析し、調査の優先度が高いと考えられる対象を抽出する役割を担っているとみられる。これにより、人的リソースを重点的に配分する「選別型の調査」が進展している。
高額な申告漏れが目立つ業種
事業所得を有する個人について、1件当たりの申告漏れ所得金額が高額だった業種を見ると、最も高額だったのは「キャバクラ」で、1件当たり4,164万円であった。
次いで「眼科医」が3,894万円となっており、眼科医が高額上位10業種に入ったのは今回が初めて。調査データの分析手法が高度化するなかで、従来は必ずしも注目されてこなかった業種についても、その実態が数値として表れ始めた結果といえなくもない。
所得税及び消費税調査の今後
今回の調査結果は、所得税及び消費税調査が、単に件数を重ねる調査から、分析に基づいて的確に対象を絞り込む調査へと移行していることを明確に示しているといえそうだ。
AIの活用が進むことで、同業他社と比較して説明が困難な数値や、継続性を欠く処理は、より把握されやすくなる。納税者にとっては、形式的な対応ではなく、合理性と説明可能性を備えた税務処理が一層重要となることが想定される。
令和6事務年度の所得税及び消費税調査は、税務行政におけるデータ活用とAI導入が、実務レベルで成果を上げ始めていることを示しているのではないか。税務調査は、静かに、しかし確実に変化しているといえそうだ。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
\1月20日(火)11:00配信/
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