「私たちは大丈夫」だったはずの老後
「夫婦ともに健康で、年金も月に23万円ほど入ってくる。老後の生活はそこまで派手じゃなくても、普通に暮らせれば十分。そう思っていました」
そう語るのは、都内の分譲マンションに夫と2人で暮らす加藤昌子さん(仮名・69歳)。夫は70歳、公務員OBで厚生年金も企業年金もある。昌子さん自身も短時間のパートを続け、2人の貯蓄額は定年時点で約2,000万円。
「旅行は年に1回、あとはスーパーでちょっといいお刺身を買う程度。ぜいたくしない生活をしていました」
老後資金に加え、生活費も年金でほぼまかなえていた加藤夫妻。ですが、2年前から夫の様子に小さな変化が見えはじめたといいます。
「最初は、財布の中に現金が少ないなと思う程度でした。でもある日、共通口座の通帳を整理していて、“月に9万円”現金が引き出されていることに気づいて」
不審に思った昌子さんが夫に問いただすと、夫はしばらく黙ったあと、こう告げたそうです。
「実は…Aに毎月9万円ずつ仕送りしていたんだ」
息子のAさんは現在40代半ば。かつては正社員として勤めていましたが、数年前に退職し、その後はアルバイトを転々としていたといいます。
「“今は生活が苦しいから頼む”と頭を下げられた時、夫は『これも親の責任だ』と応じたみたいなんです。夫は“自分の年金から出していたからいいと思った”と言いましたが、通帳はあくまで夫婦の老後資金。私はそれが一番つらかった」
仕送りはすでに2年近く続いており、総額にして200万円を超えていました。
