年金暮らし直前、64歳男性が初めて感じた恐怖
都内近郊で一人暮らしをする佐藤武さん(64歳・仮名)は、会社の継続雇用制度を利用して勤務中。来春から年金を受け取る予定です。
佐藤さんは派手な浪費を一切せず、コツコツと貯めたお金を投資に回してきました。その結果、金融資産は1億円を突破。老後不安を語る同世代からすれば、「勝ち組」と見られるかもしれません。しかし本人の口から出てきたのは、意外な言葉でした。
「嫌味に聞こえるかもしれませんが、お金だけあってもしょうがない。これに尽きます」
若い頃から、佐藤さんは貯めることに喜びを感じるタイプでした。20代で収入が少ない時代も、あらかじめ貯める金額を決めて、それを最初からなかったものとして生活する。いわゆる「先取り貯金」を取り入れると、順調に貯金は増えていったといいます。
住宅はずっと賃貸。外食はほとんどせず、コンビニエンスストアにも滅多に立ち寄らないなど、節約がデフォルトの生活。同僚が車を買い、家を買い、旅行の話をする中でも、「余計な出費」と感じて距離を置いてきたといいます。貯金が貯まると、その多くを株式や投資信託に。親からの相続もあり、若い頃には想像もしなかった資産額になっていました。
そんな佐藤さんに異変が起きたのは、昨年の冬です。当時住んでいたのは、20年以上住み続けていた家賃6万8,000円の木造アパート。寒い日の夜、軽くお酒を飲んだ後に入浴していたとき、急に目の前が暗くなりました。寒い脱衣所と熱い湯船との温度差によるヒートショックでした。
幸い、自力で意識を取り戻しましたが、浴室の床に倒れていた佐藤さんの身体は冷え切っていたといいます。もし、あのまま動けなかったら――。
「親はすでに他界し、兄弟姉妹もいません。会社に来ないからと、翌日ぐらいに会社の誰かが気づく。そんな最期になったのではと思います。『長い老後』を前提に生きてきましたが、人生いつ終わるかわからない。まざまざと感じました」
