娘の帰郷に“ほのかな安心感”を感じていたが…
「最初は、正直ホッとしたんですよ。『娘が帰ってきてくれてよかった』って」
そう語るのは、埼玉県内に住む宮内克己さん(仮名・73歳)。元銀行員で、現在は年金月22万円、妻の綾子さん(69歳)と二人三脚で穏やかな暮らしを送っていました。長年の貯金もあり、老後資金は約1,800万円。二人とも持病もなく「これからは旅行でも楽しもう」と語り合っていた矢先――
45歳の娘・美沙さん(仮名)から「東京の仕事を辞めて実家に戻りたい」と連絡が入ったのは、昨年の春のことでした。
「最初は“しばらくの間だけ”って話でした。疲れているんだろうなと思って、部屋も急いで片付けて迎え入れたんです」
ところが、同居が始まってからというもの、夫婦の生活には少しずつズレが生じていきました。
「娘は昼過ぎに起きてきて、夜中までスマホで動画を見たりゲームをしたり。食事も別々、部屋にこもってばかり。私たちの生活リズムとはまるで合わないんです」
共働きの夫婦が定年後にゆったりと過ごす――そんな理想は、娘の“ニート化”によって崩れ始めます。
「でも、責めるようなことを言えば、今度は黙り込んでしまうんですよ。心の問題も抱えているのかもと思い、強くは言えませんでした」
さらに夫婦の悩みを深めたのは、日常の“ささいな支出”の積み重ねでした。
「一緒に住んでいるんだから、と家族分の食費や光熱費はすべてこちら持ち。ちょっと高めのアイスや宅配便も頻繁に頼まれるようになって、気づけば月4〜5万円が消えていく」
娘に対して生活費の負担を求めようにも、「今はまだ仕事も見つかってないし…」と断られる始末。老後資金は想定していたペースより早く減っていき、年1回の旅行も控えるようになりました。
