(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の親が直面する「子どもの同居問題」は、時に老後設計そのものを揺るがす現実を突きつけます。成人した子が経済的・精神的な理由から実家へ“Uターン”するケースでは、「親子の距離感」に悩む家庭も少なくありません。総務省『家計調査(2024年)』によれば、2人以上の高齢夫婦無職世帯の平均支出は月25.6万円、実収入は月22.2万円。老後資金の想定外の出費や生活リズムのずれ…。理想と現実のギャップに、静かに苦悩する親たちの声に耳を傾けます。

娘の帰郷に“ほのかな安心感”を感じていたが…

「最初は、正直ホッとしたんですよ。『娘が帰ってきてくれてよかった』って」

 

そう語るのは、埼玉県内に住む宮内克己さん(仮名・73歳)。元銀行員で、現在は年金月22万円、妻の綾子さん(69歳)と二人三脚で穏やかな暮らしを送っていました。長年の貯金もあり、老後資金は約1,800万円。二人とも持病もなく「これからは旅行でも楽しもう」と語り合っていた矢先――

 

45歳の娘・美沙さん(仮名)から「東京の仕事を辞めて実家に戻りたい」と連絡が入ったのは、昨年の春のことでした。

 

「最初は“しばらくの間だけ”って話でした。疲れているんだろうなと思って、部屋も急いで片付けて迎え入れたんです」

 

ところが、同居が始まってからというもの、夫婦の生活には少しずつズレが生じていきました。

 

「娘は昼過ぎに起きてきて、夜中までスマホで動画を見たりゲームをしたり。食事も別々、部屋にこもってばかり。私たちの生活リズムとはまるで合わないんです」

 

共働きの夫婦が定年後にゆったりと過ごす――そんな理想は、娘の“ニート化”によって崩れ始めます。

 

「でも、責めるようなことを言えば、今度は黙り込んでしまうんですよ。心の問題も抱えているのかもと思い、強くは言えませんでした」

 

さらに夫婦の悩みを深めたのは、日常の“ささいな支出”の積み重ねでした。

 

「一緒に住んでいるんだから、と家族分の食費や光熱費はすべてこちら持ち。ちょっと高めのアイスや宅配便も頻繁に頼まれるようになって、気づけば月4〜5万円が消えていく」

 

娘に対して生活費の負担を求めようにも、「今はまだ仕事も見つかってないし…」と断られる始末。老後資金は想定していたペースより早く減っていき、年1回の旅行も控えるようになりました。

 

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※本記事のインタビューではプライバシーを考慮し、一部内容を変更しています。

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