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「終の棲家」のお金のリアル
有料老人ホームの月額費用※は幅広く、介護付きだと30万円以上、住宅型は10万円未満が最多のようです。2024(令和6)年の平均月額費用については、介護付きで月26万円、住宅型で月12万円となっています。
※⽉額費⽤:介護・医療サービスの自⼰負担分を除く総額(家賃+共益費+基本サービス費+⾷費・光熱⽔費)
Aさんが最終的に選んだのは、相場よりだいぶ高額ながら、仕事帰りにも立ち寄りやすく、見学会での雰囲気もよかった「住宅型有料老人ホーム」です。
入居一時金には父が遺した貯蓄を充て、月額費用は母の年金で賄い、そのほか付き添いや日用品の購入等、不足する分はAさんが負担することで、母の安心・快適な生活を担保したはずでした。
孫からの贈り物に込められた「家族の記憶」
Aさんの母には、忘れられない味がありました。それは、初めて孫が誕生日プレゼントとしてくれたお菓子の「フィナンシェ」です。かつて夫婦で分け合って食べたその味は、母にとってなによりの好物となっていました。
母は一部入れ歯を使用しているため、硬いものより柔らかい食べ物を好みます。仕事で忙しい合間を縫って面会に訪れるAさんは、いつも母の大好きなフィナンシェを携えていました。
Aさんの目の前で、母は嬉しそうに頬張ります。「おやつに、少しずつ食べてね」そう言い残して帰宅した3日後、母から一本の着信が入りました。会ったばかりなのに珍しい――そう思いながら折り返した電話の先で、母が口にしたのは衝撃的な事実だったのです。
流動食と化した大好物
「フィナンシェがぐちゃぐちゃになって出てくるの……」
びっくりしたAさん。母の話を聞くと、Aさんが訪問した翌日からおやつに出してもらったフィナンシェはカップにスープと化した状態で出てきたそうです。「確かに固い食べ物は苦手だと説明したけれど、りんごでも普通に食べられると伝えたのに……」
施設に連絡してみると、驚くべき回答が返ってきます。「当施設のルールで、固形物を召し上がる際は職員の見守りが必要です。現在は人手不足もあり、安全性と効率を考慮して、すべてミキサーにかけてお出ししています」
面会時は家族の見守りがあるからいいが、普段はリスクを避けるために流動食にする。たとえ本人が大丈夫といっても、施設側の管理基準が優先されたのです。さらに追い打ちをかけたのは、費用の通告でした。
「ミキサーにかける手間が発生するため、月額費用に『追加費用』を加算させていただきます」
母の思い出が詰まったフィナンシェは、カップの中でどろどろの液体に姿を変え、あろうことかその作業代まで請求される。ルールということはわかっているものの、母の大切にしていた楽しみや思いが置き去りにされてしまった事実に、Aさんは悲しみを感じずにはいられませんでした。

