妻に財産を渡しすぎたくないんです。路線価は1平米あたり55万円…家庭内別居状態の60代夫が〈都内マンション相続〉で吐露した本音【相続の専門家が解説】

妻に財産を渡しすぎたくないんです。路線価は1平米あたり55万円…家庭内別居状態の60代夫が〈都内マンション相続〉で吐露した本音【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「このままで本当に大丈夫なのだろうか」都内のマンションで暮らす60代の佐藤さんは、家庭内別居状態が続く妻との関係に、静かな不安を抱えていました。正直、妻には財産を渡したくない。けれど、死後まで恨まれるのも避けたい……。さらに、故郷に持つ駐車場を“感謝の形”として渡すべきかという迷いも重なります。感情と相続、そして税金。誰にも打ち明けられない本音を抱えた男性が、専門家のもとを訪れた理由とは。相続実務士・曽根惠子氏(株式会社夢相続 代表取締役)が解説します。

路線価から導いた“概算評価” 初めて知る資産の「現実」

面談では、まず現地周辺の路線価を調査しました。

 

佐藤さんの自宅マンションの路線価は1平方メートルあたり550,000円。

 

ここから土地の評価額を算出し、敷地権割合をかけ、さらに建物の評価を加えて“概算”を出していきます。

 

計算式を見ていた佐藤さんは、驚いたように言いました。

 

「こんなに複雑なんですね……マンションなら誰が見ても同じ価値だと思っていました」

 

駐車場についても同様に試算

佐藤さんが妻への“感謝のプレゼント”にできないかと考えていた故郷の駐車場も、相続上は重要なポイントになります。

 

・収益性
・路線価
・評価額
・名義変更のタイミング
・贈与税の問題

 

単純に「名義を妻にすればいい」という話ではありません。佐藤さんもそれを知り、表情が一段と真剣になりました。

 

浮かび上がった3つの課題──そして佐藤さんの“本当の望み”

概算評価が見えてきたところで、相続における本質的な問題が明らかになりました。

 

課題1:妻の生活をどう守るか

家庭内別居とはいえ、長年連れ添った妻です。佐藤さんは口には出しませんでしたが、「まったく何も渡さない」というつもりはないことが、言葉の端々から感じられました。

 

ただし“渡し過ぎたくない”のです。

 

この繊細な気持ちは、遺言書に真正面から書くべきではありません。


「妻には財産を渡さない」


そう書けば、残された家族の火種を作るだけです。だからこそ、どう表現するか が極めて重要になります。

課題2:子ども2人への暮らしの不安を残したくない

財産の分け方は、残す側の“気持ち”と受け取る側の“公平感”がぶつかり合うテーマです。

 

このまま何もしなければ、妻と子どもが共有となり、誰も望まないトラブルを生む可能性があります。

 

課題3:相続税・贈与税の不安

駐車場を妻に渡したら税金はどうなるのか? 自宅マンションの評価が高かったら、相続税が発生するのか? 納税資金はどうするのか? 次々と疑問が湧いてきました。

3つのアドバイス

佐藤さんの複雑な気持ちを整理しながら、次の方向性を示しました。

① 正確な相続財産の評価をすること

まずは、
 

・登記簿謄本(敷地権割合)
・固定資産税評価通知書

 

を確認し、正確な評価を出すこと。


ここを曖昧なまま進めると、後の判断がすべて狂います。

② 感情と税務の両方に配慮した「分割案」を作成すること

佐藤さんの本心は、

 

・妻には渡したくない
・しかし恨まれるのも困る
・子どもに負担もかけたくない

 

という3つの矛盾を抱えています。

 

そこで次のような案を提示しました。

 

A案:妻には生活に必要な最低限の財産+駐車場の収入を駐車場を妻に渡す

そうすることで「感謝」を生む可能性があります。贈与ではなく、相続で渡す方法も含めて検討します。

 

B案:妻に自宅を渡す代わりに、他財産で子どもに調整

感情ではなく「生活」の観点で妻の将来を守り、不公平をなくす方法です。

 

C案:共有を避けるための遺言整備

妻・子の間でトラブルが起きないよう、遺言で役割を明確にします。

③ 遺言書・家族信託という“争いを生まない仕組み”を整える

特に佐藤さんは

 

・認知症になった場合
・死後、妻と子がどう動くか
・その中で“恨まれない形”が作れるのか

 

この点を強く不安に感じていました。

 

そこで、

 

・公正証書遺言
・家族信託
・財産管理委任契約

 

など、将来のトラブルを未然に防ぐ手段を提案しました。

 

佐藤さんの“決意”──本音と折り合いをつけるということ

面談の最後、佐藤さんは深く息を吐き、静かにこう言われました。

 

「渡したくない気持ちは本音です。でも、遺言にそのまま書いたら……残された家族が壊れますよね。そこは、ぐっと抑えないといけないんですね」

 

私たちはこうお伝えしました。

 

「本音は本音として持っていて良いのです。ただ、遺す形は“恨まれない工夫”が必要です」

 

その言葉に佐藤さんは頷き、帰宅後さっそく登記簿や書類を探し始めたとのことです。

 

まとめ──相続とは“気持ちの整理”でもある

佐藤さんのケースは、決して特別ではありません。

 

・本当は渡したくない
・恨まれたくない
・でも、家族が揉めるのはもっと嫌

 

多くの方が、“本音”と“建前”の間で揺れながら相続を考えています。

 

相続とは、財産の話でありながら、実は「気持ちの整理」なのです。

 

今回の佐藤さんが、一歩踏み出して相談したことで、家族の未来は確実に変わりました。そして、あなたのご家庭にも、同じように隠れた本音と不安があるかもしれません。

 

 

 

 

 

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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