「なんで俺の口座が…?」父を襲った“差押え通知”
東京都郊外で暮らす佐々木勝さん(仮名・83歳)。年金月17万円でつましく生活し、趣味の将棋と散歩が日課。長男・健さん(仮名・56歳)と二人暮らしで、生活費の一部を父が補っていました。
ある日、勝さん宛に区役所から一通の封筒が届きました。差出人は「国民健康保険係 徴収担当」。
「財産差押え通知書」――通知文書には、明確に「預貯金を差し押さえた」と記されていました。
「えっ…? 俺、保険証なんてもう要らない年だろ…。なんで?」
困惑する勝さんに、健さんは顔をこわばらせながらこう言いました。
「……たぶん、俺のせいだ。“赤い封筒”ずっと放置してた」
健さんは5年前に職を失って以降、ずっと無職。会社の健康保険を失い、国民健康保険への切替が必要でしたが、手続きも保険料の支払いも放置していました。
「毎月の納付書が赤くなってきて、“ヤバそうだな”と思いながら、開けずに引き出しに突っ込んでいました。まさか、父の口座がやられるなんて…」
ここで重要なのが、「国保の納付義務は“世帯主”にある」という点です。健さんは“国保加入者”でしたが、住民票上の世帯主は父・勝さんだったため、父が“非加入者”でも徴収義務者とされてしまったのです。
国民健康保険法(第77条など)では、滞納が続いた場合、督促状の送付を経て「滞納処分(差押え)」が実施されます。
国民健康保険制度では、保険料(または保険税)の納付義務者は原則として「世帯主」とされています。そのため、実際の加入者が別の家族であっても、住民票上の世帯主名義の財産が差押え対象となることがあります。
実際、佐々木さんのケースでは、健さんが未納状態を放置したことで、父・勝さん名義の銀行口座が区役所の差押え対象となりました。
