FIREに必要なのは“資産”だけではない
FIREというと、「30代で資産1億円」「株式配当だけで生活」といった“資産規模ありき”のスタイルが注目されがちです。しかし、実際にはそこまでの資産を築ける人はごく一部に限られます。
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2023年)』によると、30代単身世帯の金融資産額平均は594万円、中央値は100万円。多くの人にとって「億単位の資産」は現実的な目標とは言い難いのが実情です。
そうした中で、高梨さんはFIREを別の角度から捉えています。
「資産がなくても、支出を抑えて、自分の時間を増やすだけでも、FIRE的な暮らしはできると思うんです。大事なのは、“どこまでを自分の自由とするか”じゃないでしょうか」
住居費や固定費を抑えられれば、「フルタイムで働かなくても生活が回るライン」は、決して非現実的な数字ではありません。華やかなFIREが話題になる時代だからこそ、あえて“贅沢をしない自由”を選ぶ生き方には、別の現実味と強さがあります。
時間がある。静けさがある。誰にも急かされず、自分のペースで一日を使える。それだけで、人は意外なほど満ち足りることがあるのです。
「ここが、私の理想郷です」
志保さんの言葉には、資産額では測れない、静かだけれど確かな“FIREの本質”が込められているようでした。
