「母がいれば、なんとかなると思っていた」
「目が覚めたら、家の中が静かすぎたんです。呼んでも返事がないから、母の部屋をのぞいたら…ベッドの上で、冷たくなっていました」
そう語るのは、東京都内のマンションで母親と二人暮らしをしていた大西健二さん(仮名・53歳)。20代で会社を辞めて以降、定職には就かず、母の年金(月約25万円)を頼りに生活していました。
健二さんは、ブランド品や高級車に強いこだわりがあり、10年前には中古のロレックスを購入。移動も中古のベンツで、月々の維持費は母の口座から支払われていたといいます。
「働かなくても生活できたし、母も何も言わなかった。俺の人生に文句を言わなかった唯一の人でした」
母の死後、すぐに生活は一変しました。
「葬儀は親戚がなんとか出してくれました。でもそのあと通帳を見たら、残高は7,423円。車のローンとカードの引き落としもあって、1週間で口座が空っぽになったんです」
健二さんは、日用品も買えず、電気・ガスの支払いも滞り始めました。生活保護の申請を試みたものの、すぐには受理されず、実家マンションも母の名義で、資産として扱われたことで、即時の保護決定は出ませんでした。
「何かの間違いじゃないかって思いました。母がいなくなっただけで、こんなに何もかもなくなるなんて…」
●本人が無職で収入ゼロ
●金銭管理が親任せ
●預貯金・資産の把握ができていない
●社会的接点が少ない
また、こうしたケースでは「親の年金が収入のすべて」であるだけでなく、「遺族年金」や「生活保護」の仕組みに詳しくないことが多く、制度の“はざま”に取り残されるリスクが高まります。
