(※写真はイメージです/PIXTA)

与党は2025年12月19日、2026年度税制改正大綱を決定した。自民党と日本維新の会による連立政権として初の税制改正大綱であり、物価高への対応とともに、「税制の公平性確保」「資産形成・資産移転の在り方の見直し」を柱に据えた内容となっている。家計向けの減税措置としては、所得税の課税が始まるいわゆる「年収の壁」の引き上げや、住宅ローン減税の見直し、NISA(少額投資非課税制度)関連の措置が盛り込まれた。一方で、ふるさと納税や防衛財源などについては、負担の偏りを是正する観点から制度の見直しが行われている。減税と増税が併存する、政策色の濃い大綱である。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

年収の壁、160万円から178万円へ引き上げ…控除は所得に応じて段階的に調整

所得税が課される基準となる、いわゆる「年収の壁」は、現行の160万円から178万円へ引き上げられる。12月18日に自民党と国民民主党が178万円までの引き上げで合意したことを受け、長く続いてきた年収の壁を巡る議論は一つの区切りを迎えた。

 

具体的には、基礎控除と給与所得控除の最低額をそれぞれ4万円引き上げたうえで、「178万円を目指す」とした与党間合意を踏まえ、基礎控除などをさらに10万円上乗せする。これにより、基礎控除を最大限受けられる所得層は、年収200万円以下から665万円以下へと拡大する。

 

対象となる納税者は全体の約8割に及び、減税規模は約6,500億円と試算されている。ただし、控除額は所得に応じて段階的に縮小される仕組みであり、「年収178万円以下は一律非課税」という単純な制度ではない。年収665万円前後で控除額が急減する構造も残っており、所得水準による負担感の差が生じ得る点は今後の課題といえる。

 

また大綱では、控除額を物価動向などに応じて調整する仕組みを導入する方針が示された。一方で、178万円の水準に到達するまでは控除の自動的な引き上げは行わないとされており、所得連動・物価連動の運用の在り方が注目される。

NISA関連措置、若年層の資産形成を後押し

NISAについては、資産形成をより幅広い世代に広げる観点から、制度の一部見直しが盛り込まれた。具体的には、「つみたて投資枠」について、18歳未満の未成年者への適用を可能とする方向性が示されている。

 

若年期から長期・積立・分散投資に親しむ環境を整えることで、将来の教育資金や生活資金への備えを促す狙いがある。少子高齢化が進む中で、家計による自助努力を制度面から後押しする位置づけといえる。

暗号資産税制、分離課税と損失繰越を明記

暗号資産(仮想通貨)を巡る税制についても、方向性が示された。一定の条件を満たす暗号資産について、株式などと同様に申告分離課税の対象とし、損失を3年間繰り越せる制度を導入する方針が明記された。

 

現行制度では、暗号資産の所得は雑所得として総合課税され、住民税と合わせた税率は最大55%に達する。株式等との税制上の不均衡が長年指摘されてきたことを踏まえた見直しである。

 

分離課税の対象は、「国民の資産形成に資する暗号資産」に限定され、現物取引やデリバティブ取引などが想定されている。適用時期は、関連制度の施行後とされ、具体的な開始時期は今後の法整備に委ねられる。

ふるさと納税、高額所得者に控除上限

ふるさと納税制度については、高額所得者ほど恩恵が大きいとの批判を踏まえ、年収1億円を超える層を対象に控除額の上限が新たに設けられる。控除額は193万円が上限とされ、独身または共働き世帯で年収1億円の場合、所得税を含めた寄付の上限額は438万円となる。

 

また、自治体が寄付募集に充てる経費の割合については、現行の最大5割から最大4割へ引き下げられる。仲介サイトへの手数料増加など、自治体間競争の過熱を是正する狙いがある。

自動車税制の見直し、EVにも新たな負担

自動車購入時に課されてきた環境性能割は、2026年度から廃止される。国内の買い替え需要を喚起し、自動車産業を下支えする目的がある。

 

一方で、電気自動車(EV)については、新たな課税の枠組みが導入される。排気量基準で課税されてきた自動車税(種別割)について、EVは重量に応じた課税とし、2028年度から適用する。さらに、2028年5月からは自動車重量税についても、EVやプラグインハイブリッド車に対する追加課税が予定されている。

防衛増税、所得税に1%上乗せ

防衛費増額の財源として、2027年から所得税額に1%を上乗せする「防衛特別所得税(仮称)」が創設される。これに伴い、復興特別所得税の税率は2.1%から1.1%に引き下げられるため、2027年時点では家計の実質負担は増えないと説明されている。

 

もっとも、復興特別所得税は減税分だけ課税期間が延長される見通しであり、将来的には国民負担が増える構造であることに変わりはない。恒久的な増税措置である点について、今後の国会審議が注目される。

教育資金贈与の非課税制度、延長見送り

教育資金贈与の非課税制度については、2026年3月末で適用期限を迎えるが、今回の大綱では延長措置が盛り込まれなかった。高齢世代に偏在する金融資産を若年世代へ移転する目的で導入された制度だが、近年は利用件数が減少し、2024年度の利用件数は約6,800件にとどまっている。

 

手続きの煩雑さや、利用者が一部の家庭に偏る点などを踏まえ、制度の役割は相対的に低下したとの判断が背景にある。

不動産相続、評価方法見直しは検討課題

不動産相続を巡る評価方法の見直しについては、富裕層課税の観点から与党税制調査会で議論が行われた。

 

土地は路線価、建物は固定資産税評価額を基に評価される現行制度では、実勢価格との乖離が生じやすく、相続直前の不動産購入による節税策が問題視されてきた。取得価額を基準とする評価方法などが検討課題として挙げられているが、今回の大綱では制度改正として明記されておらず、具体化は今後の議論に委ねられる。

減税と増税が併存する税制改正

今回の税制改正大綱は、年収の壁引き上げやNISA関連措置を柱とする家計向け減税と、防衛増税や高額所得者への制度是正を同時に盛り込む構成となった。追加減税規模が約6,500億円に抑えられたことで、財政への一定の配慮も示された形である。

 

もっとも、参議院で与党が過半数を確保していない状況では、大綱通りに制度が実現するとは限らない。今後の法案化や国会審議を通じて、家計、資産形成、相続、不動産市場にどのような影響が及ぶのか、引き続き注視する必要がある。
 

 

THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班

 

 \1月20日(火)ライブ配信/
調査官は重加算税をかけたがる
相続税の「税務調査」の実態と対処方法

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【12/23開催】
金融資産1億円以上の方のための
「本来あるべき資産運用」

 

【12/23開催】
タイ居住の国際弁護士が語る
「タイ移住」のリアルとメリット

 

【12/24開催】
高所得者・高収益法人が注目している
「ビジネスジェット投資」とは

 

【12/27-29開催】
「名義預金」vs「贈与」
“相続税の税務調査”で問題になるのは?

 

【12/27-29開催】
「相続」入門セミナー
相続人・被相続人双方が知っておくべき
具体的スケジュール・必要な手続き・今からできる事前準備

 

 

カインドネスシリーズを展開するハウスリンクホームの「資料請求」詳細はこちらです
川柳コンテストの詳細はコチラです アパート経営オンラインはこちらです。 富裕層のためのセミナー情報、詳細はこちらです 富裕層のための会員組織「カメハメハ倶楽部」の詳細はこちらです 不動産小口化商品の情報サイト「不動産小口化商品ナビ」はこちらです 特設サイト「社長・院長のためのDXナビ」はこちらです オリックス銀行が展開する不動産投資情報サイト「manabu不動産投資」はこちらです 一人でも多くの読者に学びの場を提供する情報サイト「話題の本.com」はこちらです THE GOLD ONLINEへの広告掲載について、詳細はこちらです

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録