(※写真はイメージです/PIXTA)

日本の離婚件数は、長期的には減少傾向にある。厚生労働省の人口動態統計によれば、2023年の離婚件数は19万3,000件余りで、ピークだった2002年(約28万9,000件)からは10万件以上減少している。もっとも、婚姻件数そのものも減少しているため、婚姻件数と離婚件数を単純に比較すると、「結婚した夫婦のおよそ3組に1組が離婚する」という構図に大きな変化はない。離婚はもはや例外的な出来事ではなく、人生の選択肢のひとつとして現実的に受け止められる時代になったと言える。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

協議離婚は減少、家庭裁判所が関与する離婚が増加

日本において離婚件数以上に変化しているのが、離婚の「かたち」だ。戦後しばらくの間、離婚の9割以上は、夫婦の話し合いのみで成立する「協議離婚」だった。1960年代には、協議離婚が全体の約95%を占め、家庭裁判所が関与する調停離婚や裁判離婚はごく少数にとどまっていた。

 

しかし現在では、協議離婚の割合はおおむね85%前後まで低下し、調停離婚や裁判離婚など、裁判所が関与する離婚が15%前後を占めるようになっている。

 

この変化の背景のひとつが、2007年に導入された離婚時の厚生年金分割制度だ。将来の生活に直結する年金をめぐって当事者間の合意が難しくなり、第三者の関与を求めるケースが増えている。

「長く連れ添えば離婚しない」は過去の話に

もうひとつの大きな変化は、結婚期間の長い夫婦の離婚が増えている点だ。

 

戦後直後から高度経済成長期にかけては、離婚の多くが同居期間5年未満の若年夫婦だった。1960年代の統計では、離婚した夫婦の半数以上が結婚5年未満とされ、「長く連れ添うほど離婚は減る」という考え方が一般的だった。

 

ところが現在では、結婚20年以上のいわゆる「熟年離婚」が全体のおよそ2割前後を占めるまでになっている。女性の社会進出や経済的自立、価値観の多様化に加え、老後資金や年金の分配が制度として可視化されたことも、この流れを後押ししている。

離婚に伴う問題①…年金分割をめぐる「思い込み」

結婚期間が30年以上に及ぶ夫婦の離婚では、年金分割が最大の争点になるケースが少なくない。典型的なのが、夫が長年会社員として厚生年金に加入し、妻が専業主婦として家庭を支えてきた場合だ。

 

このようなケースでは、「年金は半分もらえる」という理解が先行しがちだが、実際に分割の対象となるのは、婚姻期間中の厚生年金部分のみであり、国民年金(基礎年金)は分割の対象外となる。

 

年金事務所で交付される「年金分割のための情報通知書」を確認すると、転職による加入期間の空白や報酬水準の変動などが影響し、想定していた金額との差に直面することも多い。

 

年金分割制度は公平性を重視して設計されているが、「何が、どこまで分割されるのか」を正確に理解しないまま離婚を決断すると、老後の生活設計に大きな誤算を生む可能性がある。

 

なお、離婚時の年金分割については、原則として贈与税は課されない。

離婚に伴う問題②…不動産を渡して終了、では済まない財産分与

会社経営者や自営業者の離婚で多いのが、自宅や事業用不動産を元配偶者に引き渡す形で財産分与を行うケースだ。「現金よりわかりやすい」「円満に解決しやすい」と考えられがちだが、税務面では注意が必要となる。

 

不動産の財産分与では、内容次第で分与する側に譲渡所得税が課される可能性がある。税務上、財産分与が清算の範囲を超えると、時価で不動産を譲渡したものと評価され、取得時より不動産価格が上昇していれば課税対象となり得る。

 

離婚そのものは非課税であっても、離婚をきっかけに不動産を動かした結果、数百万円単位の税負担が後から発生するケースは決して珍しくない。

離婚に伴う問題③…「争いたくない気持ち」が招く贈与税リスク

資産を多く保有する層では、「争いを避けたい」という思いから、財産分与の額が過大になるケースも見られる。

 

婚姻中に形成された共有財産だけでなく、婚姻前から保有していた資産や事業用資産まで含めて分与する判断をすると、税務上、その全額が財産分与として認められるとは限らない。

 

共有財産の範囲を明らかに超える部分については、実質的な贈与とみなされ、贈与税の課税対象となる可能性がある。実務では、離婚時の合意内容は民事上有効であっても、後になって税務署から指摘を受け、修正申告を求められる例もある。

離婚前と離婚後…使える税の特例は異なる

もっとも、制度を正しく理解すれば、税負担を抑える余地はある。

 

たとえば、

 

離婚前:贈与税の配偶者控除(最大2,000万円)

離婚後:居住用不動産の3,000万円特別控除や軽減税率の特例

 

といったように、使える税の特例はタイミングによって異なる。

 

また、住宅を夫婦共有名義にしておけば、住宅ローン控除や売却時の特別控除をそれぞれが利用でき、結果として離婚時の税負担を軽減できるケースもある。ただし、いずれも適用要件の確認は不可欠だ。

離婚は「感情」だけでなく、「お金」と「税金」の問題に

「熟年離婚」という言葉が定着した今、離婚はだれにとっても無縁の話ではない。特に会社経営者や多額の資産を保有する人にとっては、感情に任せた判断が、想定以上の税負担や資産流出につながることもある。

 

離婚に伴うお金の問題は、「財産分与」「養育費」「慰謝料」だけでは終わらない。年金と税金を含めた全体像を把握したうえで判断することが、これからの離婚には不可欠といえるだろう。

 

 

THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班

 

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