平均営業利益率はマイナス1.76%、債務超過比率も急増
TDBの調査によれば、全国約900の一般病院の平均営業利益率はマイナス1.76%と前年度からさらに悪化した。医師や看護師確保のための賃金改善や働き方改革の対応、さらには医療材料費・電気代・設備維持費の高騰が収益を圧迫し、とりわけ財務基盤の弱い中小病院で赤字幅が拡大している。債務超過比率も13.6%に急増し、設備更新の遅れによる老朽化、人材確保への悪影響など悪循環が加速している[図表1,2]。
出典:全国「病院経営」動向調査(2024年度)
注1:2024年度は10月時点のデータに基づく
注2:営業利益平均は各年度の上下計10%を除いたトリム平均値
出典:全国「病院経営」動向調査(2024年度)
厚労省調査でも72.7%が赤字、倒産・休廃業は年間106件
厚労省が実施した一般病院(20床以上)への調査でも、2024年度は72.7%が赤字という厳しい結果が示された。
倒産・休廃業は年間106件と前年から3割増の異常なペースで推移し、「地域から病院が消えていく」現象が現実のものとなっている。物価高や人件費の上昇に対し、診療報酬が2年に1度の改定では追いつかない構造的課題が深刻化している。
地方で赤字が顕著、四国は7割超が赤字に
地域別では地方ほど経営悪化が際立つ。四国では病院の7割超が赤字に陥り、北海道や九州も同様の傾向を示す。
人口減少による患者数減と医療従事者不足が重なり、固定費を賄えない構造が続いている。中部地方は比較的堅調とはいえ、それでも約半数が赤字に陥っており、決して安定しているとはいえない。
コスト高騰と医師不足…政府は支援を前倒しも、抜本策に至らず
大学病院や中核病院も深刻な影響を受けているようだ。最新医療機器は高額化が進み、更新を先送りできないため設備投資負担が増加し、経営を圧迫する。東海地方の中核病院では2024年度に約12億円の赤字を計上し、医療機器の更新費用が大きな要因となった。また医師不足も崩壊を加速させており、外科医が一斉退職したことで手術が全面停止し、内科医の不在で診療停止に追い込まれるなど、年間で6億5,000万円の減収が見込まれる事例も出ている。
また少子化の影響で産婦人科や小児科は採算が厳しいが、地域医療を確保するため病院は容易に撤退できない。経営合理性と公共性の板挟みとなる状況が続き、使命と収益のジレンマが経営をさらに苦しめている。
政府は2025年度補正予算で物価高対策や医療従事者の賃上げ支援として5,300億円を計上し、「診療報酬改定を待たず前倒しで支援する」とした。しかし補助金は一時的措置にすぎず、構造的な赤字体質を根本的に改善するには至っていないとの見方が専門家の間で広がっている。
日本は病院が多すぎる? 再編で持続可能性を取り戻した成功例
OECDの比較では、日本は人口当たりの病院数・病床数が突出して多い。人口100万人あたりの病院数は65施設、人口1,000人あたりの病床数は13床と世界有数の多さだ。病院数の多さが固定費増大や人材不足につながり、持続可能性を損なう構造を生んでいるとの指摘も根強い。
一方で病院再編によって経営と医療の質を改善した事例もある。静岡県の中東遠総合医療センターは、掛川市立総合病院と袋井市民病院を統合して誕生し、医師不足の解消や救急搬送受け入れ時間の短縮を実現した。症例数の増加で若手育成環境も整備され、地域医療の持続可能性が大幅に向上した。厚労省は「地域医療構想」に基づき全国で病床集約や再編を進めており、今回の危機はその動きを一段と加速させる要因となりうる。
日本の医療体制は複合危機のただ中に
物価高、人件費増、医師不足、不採算部門の増加、老朽化、過剰な病院数──これら複数の要因が複雑に絡み合い、日本の病院経営は過去最悪の危機に直面している。赤字病院は約7割、倒産・休廃業も過去に例のないペースで増え、診療停止や手術停止が全国で現実となりつつある。
政府は補助金で急場をしのぎつつ再編を推進しているが、医療体制の持続可能性を取り戻すには抜本的改革と国民的議論が不可欠である。日本の医療は今まさに複合的な危機に直面しており、その解決には構造的な見直しが求められている。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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