(※写真はイメージです/PIXTA)

国税庁は2025年12月16日、2024年分の相続税申告額が前年比8%増の3兆2,446億円に上ったと発表した。相続税の基礎控除額が引き下げられ、現在の算出方法となった2015年以降、相続税の申告額は増加傾向を続けており、2021年分からは毎年、過去最高を更新している。今回の発表でも、その記録が更新された。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

調査件数・追徴税額も大幅増

国税庁によると、2024年の死亡者数(被相続人)は約160万5,378人。このうち相続税の課税対象となったのは約16万6,730人に上り、人数ベースでも過去最多となった。亡くなった人のおよそ10人に1人が相続税申告を行っている計算で、相続税はもはや一部の富裕層だけの税とは言えない状況にある。

 

相続財産の内訳を見ると、現金・預貯金などが8兆5,602億円で最も多く、これに土地が7兆4,074億円で続いた。金融資産と不動産という、従来から申告漏れが起こりやすい財産が、依然として相続財産の中心を占めている。

 

相続税申告の増加と並行して、税務署による調査も強化されている。

 

実地調査の件数は9,512件と、前年度比11.2%増加。調査によって把握された申告漏れは2,942億円で、こちらも前年度比7.2%増となった。さらに、追徴税額は824億円に達し、2016年度以降で最高額を更新している。

 

注目されるのは、無申告事案に対する追徴税額の伸びだ。実地調査のうち、無申告案件に対する追徴税額は142億円と、前年度比15.3%増。これは2009年度以降で最高水準となる。

 

つまり、「申告していなかった」「申告が不要だと思い込んでいた」ケースに対して、税務署のチェックがこれまで以上に厳しく及んでいることを示している。

海外資産も調査対象に――実地調査は1,300件超に拡大

今回の国税庁資料で特に注目されるのが、相続税の海外資産関連事案に対する実地調査の増加だ。

 

国税庁によると、海外資産を含む相続事案に対する実地調査件数は、2023事務年度の947件から、2024事務年度には1,359件へと大きく増加した。前年から約1.4倍に拡大しており、海外資産を巡る相続税調査が本格化している実態が浮かび上がる。

 

これらの調査により、海外資産に係る申告漏れなどの非違件数は209件と、前事務年度(168件)から約1.25倍に増加。さらに、海外資産に係る申告漏れ課税価格は97億円に達し、前年を大きく上回った。

 

調査対象となる「海外資産関連事案」には、被相続人や相続人が国外に居住しているケースのほか、海外の金融機関口座、外国証券、海外不動産、国外保険商品などを保有している場合が含まれる。国税当局は、こうした事案を重点調査対象として位置付けている。

CRSが可視化する「申告されなかった海外資産」

海外資産調査が強化される背景には、各国税務当局との情報交換制度の拡充がある。共通報告基準(CRS)を通じ、海外金融機関に保有する口座残高や利子・配当などの情報が日本の税務当局にも提供される仕組みが整ってきた。

 

これにより、相続税申告時には申告されていなかった海外口座や外国証券の存在が、後の実地調査で把握されるケースが増えている。被相続人が過去に海外勤務や海外投資を行っていた場合、その痕跡が相続税調査で表面化する可能性は高い。

 

実際、海外資産を申告していなかったことを理由に、多額の申告漏れを指摘され、加算税や延滞税を含めた重い追徴課税を受ける事例も少なくない。

なぜ相続税は増え続けているのか

相続税申告額が増え続けている最大の要因は、基礎控除額の引き下げだ。控除額が縮小されたことで、都市部を中心に「自宅と一定の預貯金があるだけで課税対象になる」世帯が増加した。

 

加えて、土地価格や株式などの資産価値の上昇も、相続財産全体を押し上げている。特に近年は、金融資産を多く保有する高齢者世帯が増えており、相続発生時に想定以上の課税価格になるケースも少なくない。

 

さらに、海外資産を含めたグローバルな資産保有が一般化してきたことも、相続税申告額増加の一因といえる。

「調査される前提」での申告が求められる時代

今回の国税庁データが示すのは、相続税申告が「出せば終わり」の時代ではなくなったという現実だ。実地調査、文書照会、国際的な情報交換などを通じ、申告内容は多角的に検証される。

 

現金・預貯金、土地評価、名義預金に加え、海外資産の有無と評価は、今後ますます重点的に見られる分野となるだろう。「国外のものだから分からないだろう」「申告不要だと思っていた」という判断が、後に高額な追徴課税につながるリスクは高まっている。

 

その意味で、相続税申告は「調査される前提」で行うべき時代に入った。国内外を問わず財産の全体像を把握し、評価根拠を整理したうえで申告することが、結果的に最大のリスク回避策となる。

 

相続税の申告額、調査件数、追徴税額――いずれも過去最高水準となった今回の国税庁発表は、相続税を取り巻く環境が確実に変化していることを示している。相続税は、もはや「一部の人だけの話」ではなく、海外資産も含めた総合的な対応が不可欠な税目となった。

 

 

THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班

 

 \1月20日(火)ライブ配信/
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相続税の「税務調査」の実態と対処方法

 

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