顧客の意思決定を妨げる「4つの心理的ハードル」
どれほど優れた提案であっても、顧客の心にある心理的な障害を乗り越えなければ、実現には至りません。そこでプライベートバンカーが意識しているのが、「不信」「不要」「不適」「不急」という4つのハードルを下げることです。
「不信」とは、プライベートバンカーそのものを信用できない状態のこと。この場合、他の顧客からの紹介や推薦が有効な手段となります。
「不要」とは、顧客が提案内容を必要ないと考えている状態です。丁寧なヒアリングを通じて、まだ表面化していない課題や潜在的なニーズを掘り起こします。
「不適」とは、提案された解決策が「自分には合っていない」と感じられる状態です。この場合、他の専門家の意見を取り入れたり、顧客の顧問税理士と連携したりすることで、納得感を高めていきます。
「不急」とは、必要性は理解しているものの、実行を先延ばしにしてしまう状態です。実はこの「不急」が、プライベートバンカーにとって最も乗り越えるのが難しいハードルだといえます。顧客が提案内容を「不急だ」と感じている場合には、現在の課題だけでなく、将来の夢や目標に焦点を当てることで、行動を促していきます。
顧客を尊重し柔軟に…プライベートバンカーの“作法”
新規顧客だけでなく、すでに取引のある顧客との良好な関係を維持するためにも、プライベートバンカーは継続的なコミュニケーションを行います。その際には、顧客が好む連絡手段を尊重することを重視しています。
面談の要望があれば迅速に日程を調整し、運用報告や重要な提案は原則として対面で行います。一方、簡単な連絡や情報提供はメールなどを活用し、柔軟に対応します。
また、提供する情報は、金融市場や法改正に限りません。健康、趣味、教育など、顧客の関心に合わせて幅広い情報を案内します。さらに、セミナーや講演会、交流イベントを企画・開催し、既存顧客からの紹介を通じて新たな出会いの機会をつくることもあります。
組織内外のプロフェッショナルとも連携
プライベートバンカーにとって、チーム内で知識や経験を共有すること、外部の専門家と連携することも重要な役割です。専門誌への寄稿やセミナー登壇などを通じて自身の存在を認知してもらい、信頼関係を築いていきます。こうした活動が、顧客や専門家からの支持につながります。
新規顧客との初回面談では、連携している外部専門家に同席してもらうこともあります。これが、顧客にとっては安心材料のひとつとなるのです。
プライベートバンカーが担う「3つのC」
プライベートバンカーの最大の使命は、顧客の夢や人生の目標を明確にし、それを実現するために「なにを、いつまでに準備すべきか」を共に考えることです。資産運用は、そのための手段のひとつにすぎません。
プライベートバンカーは、カウンセラー・コンサルタント・コーチという「3つのC」としての役目を果たします。
カウンセラーとしては、顧客の考えに耳を傾け、人生設計を支援。コンサルタントとしては、退職時期や生活設計を踏まえた資産運用方針を策定します。そして、コーチとしては、市場が大きく変動した局面でも冷静な判断ができるよう適切に助言します。
長期的な視点で、顧客と伴走し続けること――それこそが、プライベートバンカーに求められる本質的な役割なのです。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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