「通帳は3冊、1人1冊」…違和感の始まり
「どうして、こんなに額が違うんだ?」
そう語るのは、東京都在住の会社員・佐藤健一さん(52歳・仮名)。85歳で亡くなった母の遺品整理のため、久しぶりに実家に集まった3人きょうだいの長男です。
母が残した遺産は、3冊の預金通帳。それぞれ健一さん、妹の佳子さん(49歳・仮名)、そして実家で母と同居していた次女の里美さん(55歳・仮名)に「1冊ずつ」で手渡されました。
表面的には「きれいに分けられた遺産」。しかし、健一さんが違和感を覚えたのは、自分に渡された通帳の金額が約80万円だったのに対し、他の2冊にはそれぞれ200万円以上入っていたことでした。
「通帳の総額が少ないのはまだ分かります。でも、几帳面な母が“こんなに偏った配分”をするとは思えなかったんです」
健一さんが特に疑念を抱いたのは、母と最後まで暮らしていた次女・里美さんの態度でした。
「もう、これで終わりにしよう。母さんの意志なんだから」
そう言って、遺品の整理を早々に切り上げたがる里美さん。納戸や押し入れを触ろうとすると、「開けなくていいってば」とやんわり制止してきました。
「これは何か隠してるな…」
そう直感した健一さんは、妹の目を盗んで2階の“旧父の書斎”へと足を踏み入れました。かつて母が父とともに管理していたという“現金出納帳”や“印鑑”があった場所です。
埃をかぶった引き出しを開けた瞬間――健一さんは言葉を失いました。
「見覚えのある封筒が、3通も入っていたんです。中を確認すると…どれも、残高100万円以上の定期預金通帳でした」
それは、母の死後には誰にも渡されなかった“4冊目以降の通帳”。しかも、いずれも受取人名義は次女・里美さんに設定されており、満期になると自動的に彼女に送金される仕組みになっていました。
「里美が独占しようとしていたとは思いたくない。でも、何も言わなかったのは事実です」
