首都圏在住の80代資産家…長男の子を「養子」に
首都圏在住のA氏(80代)は、賃貸不動産と金融資産を合わせて約4億円の資産を保有する資産家だった。配偶者はすでに他界し、相続人は長男のみである。
A氏は税理士から「相続税対策として養子縁組が有効だ」と助言を受け、長男の子である孫(当時25歳)を養子に迎えることを決めた。
養子縁組が行われたのは、A氏が体調を崩し、要介護認定を受けた直後のことだった。
「形」は整っていた養子縁組
戸籍上、養子縁組は適法に成立していた。孫は学生時代に何度か祖父宅を訪れており、年賀状のやり取りも残っていた。
しかし、養子縁組後の動きは極めて速かった。
●養子縁組から3ヵ月後、高額な生命保険に加入
●不動産管理会社の持分を孫養子に移転
●遺言書で、孫養子に財産の過半を相続させる内容を明記
A氏は養子縁組から約1年後に亡くなった。
税務調査で問題視された「一連の流れ」
調査官が注目したのは、個々の行為ではなく「全体の流れ」だった。
●相続直前期の養子縁組
●同居・扶養の実態がない
●節税策が短期間に集中
●遺言で孫養子を極端に優遇
最終的に税務署は、相続税基本通達63条の2を根拠に、「相続税負担を不当に減少させる目的が主である」と判断した。
結果として、孫養子は相続税法上の法定相続人から除外され、基礎控除や生命保険の非課税枠は認められず、数千万円規模の追徴課税が発生した。
民法上の養子縁組は有効なままだったが、相続税計算では「いなかったもの」として扱われたのである。
本ケースに見る「否認ライン」、実務家が口を揃える「安全圏」
本ケースにおいて、否認の決め手となったのは下記だ。
●タイミング(相続直前期)
●実態の乏しい親子関係
●節税策の短期集中
単体では合法でも、組み合わさることで否認されるという現実がある。
そして、下記のものが欠ける場合、節税額が大きいほど税務署の目は厳しくなる。
●税金以外の合理的理由が説明できる
●同居・扶養などの実態が資料で確認できる
●相続対策が過度に集中していない
節税の先にあるリスク…否認より深刻な「家族関係・人生」への影響
養子縁組は、条件が整えば数百万円から数千万円規模の節税効果を生む強力な相続対策である。
しかし、制度だけを利用し、実態や家族関係への配慮を欠けば、否認や争族という大きな代償を払うことになりかねない。節税額の多寡よりも、家族関係をどう維持するか。養子縁組を相続対策として用いるのであれば、この視点を欠いてはならないだろう。
否認より深刻な「家族関係・人生」への影響
ここで見落とされがちなのが、税金より重い代償である。
●実子の不信感
●兄弟姉妹との断絶
●相続後も続く感情的対立
一度成立した養子縁組は、たとえ税務上否認されても、民法上は有効なまま残る。つまり、「税務ではいなかったことにされ、家族関係だけが壊れる」という最悪の結果も起こり得る。
相続対策は、被相続人の死後、残された家族がその結果を一生背負う制度であることを忘れてはならない。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
\3月20日(金)-22日(日)限定配信/
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