「業務の実態を備える」という問題も解決
前回の連載で管理料のおおよその目安の料率は説明しましたが、突き詰めていくと、「管理費用を売り上げの何%にすればよいのか?」あるいは「サブリースにあたっての賃料設定をどのくらいにすれば、税務署は文句をいわないのだろうか?」など、さまざまな悩みが噴出し、頭の痛いところです。
そんな面倒な悩みをすべて解決してしまう方法があります。その方法ですが、やはり、まず最初に会社を設立します。ただし、これまで紹介したもののように、建物の名義をビルオーナー個人にしておくわけではありません。建物自体を法人化(法人成り)、つまり法人名義にするのです。
そうすれば、法人は賃貸収入を直接受け取るビルオーナーになるため、まぎれもなく業務の〝実態〞を備えることになります。家賃収入がすべて法人に移転するわけですから、ビルオーナーに帰属していた利益は大幅に減少し、そのほとんどを法人に帰属させられることになります。
そして、法人の株主を子どもや孫にすることにより、親の相続財産から不動産を完全に外すことができます。収益不動産の法人所有により、あくまで合法的に、かつスムーズに財産承継させることができるのです。
まだまだ高いが「引き下げ」の方向にある法人税
ここからは、そんな不動産所有法人によるメリットを、さらに詳しくご説明していきましょう。不動産を個人として所有するのではなく、法人として所有すると、不動産の賃貸収入に対しては所得税ではなく、法人税が課せられることになります。
これまで個人事業主としてやってきた方は、法人税と聞いてもピンと来ないかもしれませんが、大増税時代といわれながらも、法人税率は引き下げの方向に進んでいることをご存じでしょうか? 実際、平成24年4月1日からは法人実効税率が40.69%から38.01%に引き下げられました。
本来は35.64%になるはずだったのですが、東日本大震災の復興を税金で手助けするために、平成27年3月までの3年間は、復興特別法人税が上乗せされることになっています。ちなみに法人実効税率とは、法人税だけでなく、法人住民税や法人事業税、地方法人特別税を合計し、法人の利益に課税される実質的な税金の負担率を示すものです。
実際のところは、不動産管理会社として設立するような比較的小規模な法人については、さらに税率が下がります。法人の所得の増加に応じて税率が上がる仕組みとなっており、先ほどの税率は最高実行税率を表しています。所得によっては30%を下回ることも少なくないのです。
ただし、引き下げられたとはいえ、日本の法人実効税率は米国と並び、世界でもトップレベルの高さです。これは何も今に始まったことではありません。昔から日本の法人に課せられる税金は高く、ちょっとやそっと引き下げたくらいでは、まだまだ諸外国の水準に追いつかないのです。