前回は、「グループ法人税制」を活用した節税対策について説明しました。今回は、「グループ法人税制」によって、節税と資金繰りの改善に成功した事例を見ていきます。

「グループ法人税制」によって譲渡益への課税がゼロに

前回の続きです。筆者の会社のコンサルティングにしたがって対策を行ったA社とB社。その効果を簡単に解説しておくと、まずは不動産および事業の売却によってA社の所得2000万円とB社のマイナス所得1000万円が相殺され、グループ全体の税負担が半減しました。

 

さらに、新たにJ銀行から好条件の融資を受けることに成功。A社の家賃収入も返済に回すことができるため資金繰りの改善にも成功しました。

 

ただ、B社の自社不動産をA社へ売却する税務処理については、1億5000万円程度の「譲渡益」が発生してしまう状況でした。当期の営業損失1000万円を筆頭に、過去7年以内の「繰越欠損金」が3000万円存在している状態で、相殺しても約1億1000万円の所得が発生し、4400万円の税負担を負うことになっていました。

 

しかし、「グループ法人税制」の導入によって譲渡益1億5000円は税務上は認識されないため、税負担の必要がなくなりました。これが「グループ法人税制」最大のメリットといえます。

「欠損金」を有効利用して税負担を抑える

売却した代金5億円はR信用金庫への返済に充当し、B社は、税務上留保されている含み益だけを抱えた会社となり、解散コストの費用、手続きや今後の再利用を考慮し、譲渡元法人については休眠会社としておくことにしました。

 

相続や贈与が発生する3年以内に取得した法人所有の不動産については、原則として通常の取引価格(通常は売買価格)で評価されます。いわゆる「3年縛り」と呼ばれるものです。したがって、法人化や物件の譲渡時期などについては注意が必要になります。

 

Mさんは、この3年縛りが解除され、土地の評価方法が路線価評価になったときには法人の株価評価額が下がるため、承継者である子どもや孫にA社株式を贈与して財産承継していく予定です。

 

B社は、税務上の含み益を抱えるだけの実質休眠状態の会社になりましたが、将来、A社が自社の不動産を外部の第三者に売却した場合には、B社で含み益が実現して課税対象となり多額の税負担が発生することが予想されます。

 

しかし、B社はバブル期に多額の損失を被っており、このときの欠損金(期限切れ欠損金)を解消しきっていないため、外部売却のタイミングを見計らい、会社の「清算」を行うことにしました。欠損金を有効利用して税負担を抑えることが可能となるわけです。

 

Mさんは、結果的に法人化とグループ内の組織再編によって、ほとんど税負担なく相続が可能になる環境づくりに成功したといえます。

本連載は、2013年7月29日刊行の書籍『ビルオーナーの相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

ビルオーナーの相続対策

ビルオーナーの相続対策

川合 宏一

幻冬舎メディアコンサルティング

ビルを所有しているような資産家であれば、顧問税理士をつけて節税も抜かりなくやっていて不思議はなさそうなものですが、実はほとんど有効な手だてを講じていない人が多いのが現実です。 そのため、そのような人は相続税で数…

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