法務省を騙る、ニセの「住所変更メール」が飛び交っている!…不動産登記の新制度につけ込む「フィッシング詐欺」多発の実情とその対策【司法書士が警告】

法務省を騙る、ニセの「住所変更メール」が飛び交っている!…不動産登記の新制度につけ込む「フィッシング詐欺」多発の実情とその対策【司法書士が警告】
(※写真はイメージです/PIXTA)

2025年4月21日以降、不動産に関する登記手続では、住所/氏名(フリガナ)/生年月日だけでなく、メールアドレスも求められるようになりました。背景には、2026年4月施行予定の住所・氏名変更登記義務化があります。メールを利用した手続きは便利なようですが、運用が開始されるとさまざまな問題が見えてきました。司法書士・佐伯知哉氏が解説します。 

メールアドレス提供には慎重な姿勢を

制度はメールアドレス提供を前提に設計されていますが、それでも私は、実務家としてあえてこうお伝えします。「メールアドレスの提供を、安易にはおすすめしません」。それは、下記の理由によります。

 

①本物と偽物の見分けが、一般の方には非常に困難だと思われるものもある

②メール確認漏れがあると、自動住所変更のメリットを享受できない

③書面通知の方が最終的に確実で安全

 

これらは、日々相談を受ける中での「現場の結論」です。

 

もちろん、ITに強いという自認があり、毎日メールを確実にチェックしていて、フィッシング対策にも慣れている…という方であれば、メール提供のメリットを活かせるでしょう。

 

しかし、むしろ 「メール提供なし」のほうが安心して運用できると感じています。とくに、下記に該当する方々です。

 

●高齢である

●メールはほとんど見ない

●スマホやPC操作が得意でない

●詐欺メールが心配で仕方ない

怪しいメールを受け取ったときの対応術「3つ」

とはいえ、現実には法務省から正規のメールが来る可能性もあります。怪しいメールを受け取ったときの対応術を3つに絞っておきます。

 

【1】 メール内のリンクは絶対にクリックしない

下記のようなリンクは、そのままクリックしないことが大原則です。

 

●「こちらから登録」

●「このURLにアクセスして手続きを行ってください」

 

何か操作が必要だと感じたら、

 

①メールのリンクは無視し、

②自分でブラウザを開き、

③法務省や登記・供託オンライン申請システムの公式URLを“手入力”してアクセスする

 

という流れを徹底してください。これだけで、かなりの被害は防げます。

 

【2】 送信元アドレスを「一文字単位」で確認する

まずは下記について、落ち着いて確認しましょう。

 

●公式サイトに載っているアドレスと完全一致しているか

●「moj.go.jp」が「moj.co.jp」などにすり替わっていないか

●不自然な英数字が紛れ込んでいないか

 

詐欺メールは、あえて本物と1〜2文字だけ違うアドレスを使ってきます。少しでも違和感があれば、その時点でメール全体を信用しないのが安全です。

 

【3】添付ファイルは一切開かない

法務省からの案内メールに、下記のようなファイルが添付されていれば、ほぼアウトと考えてください。

 

● ZIPファイル

●Wordファイル

●Excelファイル

 

こうしたファイルは、ウイルス感染や情報抜き取りの入口になります。開封した瞬間に感染するケースも多く、絶対にクリックしないでください。

怪しいと思ったら「何もしない」…これが「最大の防御」

最後に、ポイントをもう一度整理しましょう。

 

●2025年4月21日以降、不動産登記ではメールアドレスの提供が原則必要になる

 

●2026年4月からの住所・氏名変更登記義務化と、職権による自動住所変更の“下地づくり”としてメールが使われる

 

●その制度に便乗して、法務省・登記供託オンライン申請システムを装うフィッシングメールが出回り始めている

 

●メール内リンクは踏まない/送信元アドレスを確認/添付は開かないのが三大原則

 

●メールアドレスの提供は、「便利さ」と「リスク」のトレードオフ。どうしても不安な人は「メールなし」の選択肢も視野に入れる

 

そして何より大切なのは、少しでも「おかしい」と感じたら、そのメールで何もしないことです。クリックしない。返信しない。添付を開かない。そのうえで、気になる場合は公式サイトか、信頼できる専門家に直接確認してください。

 

「法務省からの重要なお知らせ」という言葉に驚いて、あわててクリックしてしまわないように。制度の中身をきちんと理解しつつ、「便利さ」だけでなく「安全性」も天秤にかける視点を、ぜひ持っていただきたいと思います。

 

 

佐伯 知哉

司法書士法人さえき事務所 所長

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