LINEを既読無視され続け、ついに“上京”を決意
LINEのメッセージには既読がついたまま、返信はありませんでした。そう語るのは、地方に暮らす主婦・斉藤由美さん(48歳・仮名)。都内の企業に就職した一人息子・涼太さん(23歳・仮名)は、東京で一人暮らしを始めてから1年が過ぎていました。
「最初のころは、仕事のことや料理の話など、楽しそうに話してくれていたんです。でも最近は、電話もLINEもまったく返ってこなくて……“忙しいだけ”だと信じたかったんですが、やっぱり心配になってしまって」
夫には「やりすぎだ」と止められましたが、由美さんは新幹線に乗って“黙って”上京し、涼太さんの住むアパートへと向かいました。
最寄り駅から徒歩15分ほどの場所にあるワンルームで、涼太さんは暮らしていました。学生時代に下宿していた部屋よりも狭く、表札や郵便受けはあるものの、どこか「生活の気配が薄い」と感じたそうです。
「留守なのかなと思ったのですが、鍵が開いていたんです。呼び鈴を鳴らしても反応がなくて……そっと中をのぞいたら、息子がベッドにもたれて眠っていて」
部屋の中には、食べ終えたカップ麺の容器がいくつも積まれ、冷蔵庫にはペットボトルの水が数本だけ。洗濯物は床に置かれたままで、空き缶はコンビニの袋に詰め込まれていました。
「まさか、こんな状態で生活していたなんて……。お金がないのか、時間がないのか、それとも気力がなくなっていたのか、何もわからなくて。ただ、胸が苦しくなりました」
厚生労働省『令和6年賃金構造基本統計調査』によると、20~24歳男性の平均賃金は23万4,200円。ここから社会保険料や税金が差し引かれるため、実際の手取りは18〜19万円程度になります。そこから東京23区のワンルーム相場である7~9万円の家賃、光熱費、食費、通信費などを支払えば、貯蓄に回せる余裕はほとんどありません。
さらに、2023年以降の食品・日用品の値上げが続き、都市部で暮らす単身世帯にとって生活コストは一層厳しくなっています。
「“外食は高いし、自炊は面倒くさい”と笑っていましたが、本当は疲れて動けなかっただけなのかもしれません。毎日きちんと働いて、こんな環境に帰ってきていたんだと思ったら……何も言えませんでした」
