調査にも表れている“親の希望と子の現実”のズレ
「ハルメク 生きかた上手研究所」が、50~87歳の女性474人を対象に行った「介護に関する意識・実態調査」によると、自分が介護される場合に“自宅で暮らしたい”と答えた人は約4割で最多でした。
しかし、家族を介護する場合は約7割が「施設を希望」しており、多くの家庭で「親は家、子は施設」を望むギャップが発生しています。
菜穂子さんの家庭もまさにその構図です。
また調査では、介護経験者ほど
・家族との方針共有
・外部サービス活用
の意識が高いことも示されていました。
祖母の介護騒動を通じて“在宅の限界”を痛感した菜穂子さんは、その典型的なケース。
「介護は愛情だけでは無理だと痛感しました。だからこそ母の『家で最期まで』という言葉が重すぎて……」
今まで避けてきた「家とお金の話」
今回の帰省で、菜穂子さんの胸には不安が渦巻きました。
実家の貯金は多くないはずですし、両親の年金は2人合わせて月に15万円ほど。昨今の物価高で生活はギリギリです。
家の老朽化も気になる。父は80歳で介護する側には回れないかもしれない。
「母の願いに寄り添いたい気持ちもあるけれど、私の生活もあるし、東京の家で同居すれば私が壊れる。どこで線を引くか、ちゃんと考えないと」
次に帰省したときには、
・親の貯金の残額
・自宅の維持や売却の可能性
・施設入居の現実性
・在宅介護の場合の外部サービス利用
これらを正面から話し合うつもりだといいます。
「『お母さんを頼むよ』と言われて、逃げたい気持ちもある。でも“何も決めないまま”はもっと怖い。覚悟を決めて向き合うしかないのかな、と思っています」
40歳一人娘の胸にのしかかる“親の老い”の現実。そして、親の願いと子の人生の折り合いをどうつけるか──。菜穂子さんの葛藤は、これから本番を迎えようとしています。
[参考資料]
ハルメク 生きかた上手研究所「介護に関する意識・実態調査」
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
