広すぎる家の維持費と老朽化問題
サユリさんの家は築30年以上。外壁や屋根の修繕も必要で、リフォーム費用は数百万円にのぼります。
室内も広く、2階はほとんど使っていない状態。
「掃除が追いつかないんです。息子の療養で外出も少なくなり、庭も手入れができなくて……もう限界です」
家は広ければ安心、という時代は終わりました。
年齢を重ねると「維持するだけで大変」「使わない部屋が多い」「光熱費が高い」など、“暮らしに合わない家”になってしまうケースが増えています。
そこで、サユリさんに「大規模リフォームではなく、現況での売却+住み替え」を提案しました。
「静かで落ち着いた地域で、車が使える家」に住み替えたい
サユリさんの希望は明確でした。
「静かで落ち着いた環境で、車を使える場所。利便性はほどほどで構いません」
娘さんの勤務先にも通える範囲で、マンションや平屋の一戸建てなどを候補に検討。
売却価格によっては、中古マンション購入+リフォームという選択も可能です。
一方で、今の土地は単独では買い手が限られます。
そのため次のような複合的な売却戦略を立てました。
・現況販売で早期売却を目指すプラン
・価格交渉の際に「建築可能化の余地」をアピール
これにより、買い手にとっての“将来の可能性”を訴求できる形を整えています。
家を手放すことは「暮らしを整えること」
サユリさんは面談の中で、次のように話しました。
「この家を建てたときは、家族の幸せを守る場所だと思っていました。でも今は、この家を守るために暮らしているような気がするんです」
この言葉は、多くの高齢世帯に共通する本音ではないでしょうか。
家族の成長に合わせて建てた家も、年月が経つと暮らしに合わなくなっていきます。
サユリさんは面談を通じて「家を手放す」ことをネガティブなことではなく、“次の暮らしをつくる前向きな選択”として受け止めるようになりました。
敷地延長や再建築不可の土地でも、価値を高める方法はある
サユリさんのような「接道2メートル」「敷地延長」といった制限のある土地は、一般的に売却が難しいといわれます。
しかし、隣地協議や通路整備などの工夫によって、土地の価値を引き上げることが可能です。
サユリさんのケースも、今後の市場動向や隣地の売却タイミングによっては、一体売却による大きな価値向上が見込まれます。
相続と住まいの見直しは、早めの相談がカギ
相続対策というと「税金をどう減らすか」が注目されがちですが、実際には“暮らしの整理”こそが出発点です。
広すぎる家、使わない不動産、古くなった建物――それらをどう扱うかによって、将来の相続トラブルを防ぐことができます。
サユリさんも、早い段階で住み替えを検討したことで、
・新しい生活の準備ができる
・家族に負担を残さない
という3つのメリットを得ることができました。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
