「広い家こそ幸せ」と思っていたのに…〈管理地獄・固定資産税・老朽化〉旗竿地の我が家を前に〈70代女性〉が漏らしたホンネ「もう限界です」【相続の専門家が解説】

「広い家こそ幸せ」と思っていたのに…〈管理地獄・固定資産税・老朽化〉旗竿地の我が家を前に〈70代女性〉が漏らしたホンネ「もう限界です」【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

都内で暮らすサユリさん(70代女性)は、思い出の詰まった築30年以上の一戸建てが、今では広すぎて管理が負担となり、売却や住み替えを検討せざるを得なくなっていました。さらに、接道2メートルの“敷地延長(旗竿地)”という特殊な形状が建て替えや売却を難しくし、「この家をどうすべきか」という悩みを深めていたといいます。一方で、隣家との一体売却により土地価値を高められる可能性も見えてきましたが、近隣事情が絡む慎重な判断が必要でした。広い家を維持するか、思い切って住み替えるか――。サユリさんが導き出した答えを、相続実務士・曽根惠子氏(株式会社夢相続 代表取締役)が解説します。

広すぎる家の維持費と老朽化問題

サユリさんの家は築30年以上。外壁や屋根の修繕も必要で、リフォーム費用は数百万円にのぼります。

 

室内も広く、2階はほとんど使っていない状態。

 

「掃除が追いつかないんです。息子の療養で外出も少なくなり、庭も手入れができなくて……もう限界です」

 

家は広ければ安心、という時代は終わりました。

 

年齢を重ねると「維持するだけで大変」「使わない部屋が多い」「光熱費が高い」など、“暮らしに合わない家”になってしまうケースが増えています。

 

そこで、サユリさんに「大規模リフォームではなく、現況での売却+住み替え」を提案しました。

「静かで落ち着いた地域で、車が使える家」に住み替えたい

サユリさんの希望は明確でした。

 

「静かで落ち着いた環境で、車を使える場所。利便性はほどほどで構いません」

 

娘さんの勤務先にも通える範囲で、マンションや平屋の一戸建てなどを候補に検討。

 

売却価格によっては、中古マンション購入+リフォームという選択も可能です。

 

一方で、今の土地は単独では買い手が限られます。

 

そのため次のような複合的な売却戦略を立てました。

 

・隣地(D家)との共同売却による通路拡張
・現況販売で早期売却を目指すプラン
・価格交渉の際に「建築可能化の余地」をアピール

 

これにより、買い手にとっての“将来の可能性”を訴求できる形を整えています。

家を手放すことは「暮らしを整えること」

サユリさんは面談の中で、次のように話しました。

 

「この家を建てたときは、家族の幸せを守る場所だと思っていました。でも今は、この家を守るために暮らしているような気がするんです」

 

この言葉は、多くの高齢世帯に共通する本音ではないでしょうか。

 

家族の成長に合わせて建てた家も、年月が経つと暮らしに合わなくなっていきます。

 

サユリさんは面談を通じて「家を手放す」ことをネガティブなことではなく、“次の暮らしをつくる前向きな選択”として受け止めるようになりました。

敷地延長や再建築不可の土地でも、価値を高める方法はある

サユリさんのような「接道2メートル」「敷地延長」といった制限のある土地は、一般的に売却が難しいといわれます。

 

しかし、隣地協議や通路整備などの工夫によって、土地の価値を引き上げることが可能です。

 

サユリさんのケースも、今後の市場動向や隣地の売却タイミングによっては、一体売却による大きな価値向上が見込まれます。

相続と住まいの見直しは、早めの相談がカギ

相続対策というと「税金をどう減らすか」が注目されがちですが、実際には“暮らしの整理”こそが出発点です。

 

広すぎる家、使わない不動産、古くなった建物――それらをどう扱うかによって、将来の相続トラブルを防ぐことができます。

 

サユリさんも、早い段階で住み替えを検討したことで、

・売却のタイミングを自分で選べる
・新しい生活の準備ができる
・家族に負担を残さない

という3つのメリットを得ることができました。

 

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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