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お金がなければ「不動産投資の事業」は続けられない
筆者は、自己資金を十分用意してから戸建て投資を始めるべきだと思います。不動産投資は事業(※2)です。事業をやっていれば必ず不測の事態が発生します。
※2 不動産投資は事業
不動産投資を単なる資産運用の一環ではなく、経営的視点を持った事業活動ととらえる考え方。不動産投資は、物件の選定、資金調達、賃貸管理、修繕計画、税務対策など幅広い業務が必要で、これらを適切に管理することで安定した収益を得られる。そのため、「事業」として認識し、長期的な視野に立って運営する姿勢が重要となる。
それはとくにリフォームまわりで顕著で、中古物件では予期せぬ不具合、予期せぬ問題に必ずといっていいほど出くわします。先日、筆者が指導している投資家から、「購入物件の浄化槽にヒビが入っていて交換となると費用が100万円以上と業者からいわれている」との相談がありました。そのときはあれこれアイデアを出して何とか数万円で済む方法が見つかって切り抜けられましたが、このような問題は常に起こります。問題に対処するための備えが必要です。
もし対応できないとなれば、せっかく手に入れた物件を手放さざるを得なくなってしまいますし、問題を抱えている物件であれば足元を見られますから、高く売って利益を得ることはできません。
トラブルに対応できるように資金には余裕を持たせる必要があります。お金をかけることでトラブルをキッチリ解決できれば、かかったコストは貸し出しているうちに回収できます。売却するときもそれなりの値付けで利益を出すことができます。
格安の戸建て投資といえども事業です。事業を行うには資金がマストということを頭に入れておいてください。
「投資エリア」を決めるための2つのポイント
先ほど自己資金のお話をしました。もう資金のメドがついている人はすぐに物件検索……となりがちですが、その前に投資エリアを絞りましょう。あまり広い範囲を投資エリアにしてしまうと土地の情報や相場観を養うのに時間がかかってしまうので、エリアはある程度絞るのが得策です。
筆者の場合は千葉県内、とくに外房エリアをターゲットにしています。外房エリアは千葉県の太平洋側に位置し、幹線道路沿いは店舗などが立ち並んでいますが、1本道をそれれば田園風景が広がっているような立地です。地方ならどこでも見られる、ありふれた光景といえるでしょう。
気候は温暖で、冬場でも雪が降ることはめったにありません。比較的過ごしやすい地域だと思います。夏場は九十九里浜が海水浴客で賑わい活気があるのですが、冬場の海は閑散としています。近年は自然減のほか、大規模工場の撤退などによって人口減少に見舞われています。一言でいえば、日本中の市町村が抱えているのと同じ悩みを持っている地域です。
ではなぜ筆者がこのエリアをターゲットにしたのかというと、それには2つの理由があります。
理由1:やっぱり土地勘はあったほうがいい
筆者は現在、千葉の外房エリアに住んでいますが、居住する前から趣味のサーフィンのためにこのエリアに頻繁に通っていました。当然、自分が住んでいるエリアはほかのエリアとは情報量が違います。不動産投資で情報量が多いことは明確なアドバンテージです。
地方で投資をしたいけれど、地方に土地勘がある場所がないという方は、まず投資エリアを設定して、その地に頻繁に足を運ぶことです。地場の不動産業者への聞き込み、物件の内見、街の様子の観察。すれ違う車の台数も、そのエリアの人口を測る手がかりになります。そしてスーパーやドラッグストア、ホームセンターなどで自ら買い物客となって、その地域の活気がどうなのかじかに感じてみてください。こればかりは地道にやるほかありません。
理由2:お手ごろ価格ながら賃貸需要が手堅くある
賃貸の需要があっても物件価格が高ければアガリは少なくなってしまいます。賃貸の需要があり、それなりの賃料をいただけてなおかつ物件価格が手ごろだったのが、このエリアでした。物件価格が抜群に安くてもまったく賃貸の需要がなかったり、安い賃料しかもらえないエリアもあります。
物件価格が驚くほど安いエリアを見つけ、その土地に物件見学に出かけたときのことです。筆者の住むところから車で2時間ほどののどかな田舎町。大きな湖があり自然豊かな場所でした。さっそく現地業者の店舗を訪問して話をうかがいます。
業者 「今回は永住目的ですか?」
筆者 「いいえ、購入後賃貸に出そうかと考えています」
業者 「なるほど。ではいくらで賃貸に出そうとお考えですか?」
筆者 「まだこちらははじめてで相場がよくわかってないんです。いくらなら貸せそうですか?」
ネットでの事前リサーチでは近隣の戸建てが4〜5万円で賃貸に出ていました。それくらいの水準を想像していたのですが、甘くありませんでした。
業者 「まあ、この物件だったら……1万円くらいで賃貸が付きますよ」
筆者 「……」
物件は築20年の2LDKで庭と駐車場付きです。賃料1万円なんて考えられません。筆者がそう指摘すると、「賃料4〜5万円の物件は学校や役所、スーパーなどから近い土地の物件。今回の物件はもとが別荘地の山のなか。ニーズは都内の人が別荘感覚で借りるくらいで、需要はかなり限られている」と返されました。
それでもとりあえず物件を見せてもらうために現地に向かいます。着いてみると、そこはなんと森のなか! 俗世間とは切り離された、ロビン・フッドのような世界です。道は軽自動車1台がやっと通れる程度。しかも傾斜があったり、ぬかるみがあったりで四駆でなければ通れません。
物件自体は築20年程度の洋風のオシャレなつくりで、建物の傷みも少なく、売値は100万円台。しかし不便すぎます。物件を前にして「こりゃ賃料1万っすね〜!」と納得しました。このようなエリアもありますから注意してください。


