(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産投資にはさまざまな選択肢が存在します。市場のセレクトにおいても、都市部のような競合が多いエリアもあれば、地方のような選択肢が限られる地域もあるでしょう。例えば、比較的小さなマーケットである「地方戸建て物件」に不動産投資を行うとしたら、どのような戦略が必要でしょうか。本記事では、宮崎俊樹氏の著書『空き家は使える!戸建て賃貸テッパン投資法 2ndエディション』(技術評論社)より、初めての不動産投資に「地方戸建て物件」をおすすめする理由を解説します。

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資産価値よりも“いくらの家賃をいただけるか”

もう1つ、筆者が地方物件を選ぶ理由があります。都市部の物件と地方の物件では、資産価値に大きな違いがあります。当然、都市部の物件のほうが資産価値が高いので物件価格が高くなります。では、その分高い賃料を設定できるかといえばそうでもありません。

たとえば同じスペックの戸建てが、筆者の住む千葉県でも都会寄りの船橋と少し田舎のほうの九十九里にあったとします。資産価値は圧倒的に船橋の物件のほうが高いでしょう。ですが船橋の物件は、それに見合うだけの高い賃料をいただけるかといえばそうでもありません。

九十九里で6万円の賃料をいただける物件と同じスペックの物件があったとして、船橋では7〜8万円くらいの賃料になると思います。しかし物件価格は九十九里で400万円とすれば、船橋では700万円くらいはします(あくまで一例の数字です)。

資産価値を測る指標の1つに 積算評価 (※2)があります。
 

※2 積算評価

不動産を評価する指標の1つで、主に銀行が担保評価額を測る目安として用いている。物件を担保に入れて借入をする場合は、銀行では積算評価によって担保価値を判定し、融資額を検討する。積算評価は土地の資産性や建物の築年数などが重視され、物件の収益性は考慮されずに算定される。地方戸建ての場合、築浅物件やかなりの好立地に建つ物件でなければ積算評価は低くなるため、物件を担保に銀行から借入を起こすことは難しくなる。


銀行は主にこの積算評価で物件の資産価値を測るのですが、積算の評価が高いからといっても、売却するときにその値段で売れるとは限りません。積算評価が600万円でも売却価格は500万円にしかならないかもしれませんし、積算評価300万円の物件が400万円で取引成立となるかもしれません。

物件の資産価値が大事になってくるのは銀行からお金を借りるときだけです。資産価値が高いことは融資を引き出すときに有利に働きます。それ以外は資産価値が高ければ固定資産税が高くなりますし、いいことはありません。

深刻な空室率に対抗できるのは戸建て物件 

少子高齢化とともに人口減少が進んでいます。それにもかかわらず賃貸物件は増え続けています。なぜ人口が減少しているのにアパートをはじめとした賃貸物件を建て続けるのでしょうか?

その原因の1つは相続税にあります。

日本の相続税法はただ土地を持っているよりも、その上にアパートやマンションを建てたほうが得する仕組みになっています。そのため、アパートやマンションから利益を得られにくくなっても、「相続税が減らせるなら」と考えてアパート物件を建設する人がいるわけです。

日本の賃貸住宅の空室率はおおむね右肩上がりが続いており、18%オーバーが当たり前になっています。これからもアパート物件は供給されて物件数が増えていくけれど、人口減少で住む人は減っていく。価格競争が激化して賃料は減少一途をたどり、不動産賃貸業で利益を出せなくなってしまう。このような状況で兼業不動産投資家がアパート物件を運営していくのは簡単ではありません。
 

[図表1]賃貸住宅戸数と賃貸住宅の空き家率推移


戸建て賃貸の場合は、筆者の経験からいうと、求められる量に対して供給できている量が十分ではないため、不動産賃貸業受難の時代にあっても賃貸は付きます。

筆者にいわせれば、賃貸物件の最後の砦が戸建て賃貸物件です。戸建ての需要まですっかりなくなってしまう地域があるとすれば、もうその地域には賃貸の需要はないと言い切ってもよいのではないかと考えています。

初心者に戸建て賃貸をおすすめする理由

初心者がいざ地方に建つ戸建て物件を買うとなったとき、まず不安になるのは「本当に借り手が付くのかどうか」だと思います。

ここで考えないといけないのが需要と供給の関係です。いくら安い物件を買っても客付けできなければ意味がありません。アットホームやスーモなどの不動産ポータルサイトを見てもらえばわかりますが、先ほどお話ししたとおり地方でもアパート物件はたくさんあります。

一方で戸建て物件は少ないのです。

たとえばアットホームで千葉県M市の賃貸物件を検索してみると、ヒットする物件数は952件でした。これに戸建て物件の条件をプラスして絞り込みをかけると52件まで減少します。20分の1にまで減ってしまうということです。しかも、この52件には テラスハウス物件(※3)も含まれているので、独立した戸建ての戸数は52件よりもさらに少なくなります。 
 

※3 テラスハウス

一般的に1階建てまたは2階建ての連棟住宅を指す。それぞれの住戸が独立した入り口を持ち、隣接する住戸と壁を共有する形式の住宅のこと。


この一例からも戸建て賃貸は「需要>供給」というイメージをつかんでもらえるでしょう。

実際のところ、筆者が所有している戸建て物件の大半が募集から1カ月以内で客付けができています。それくらい戸建て物件というのは客付けで優位なのです。もっとも、いくら客付けしやすい戸建て物件であっても、まったく賃貸需要がないエリアでは客付けで難儀するのはいうまでもありません。当然のことながら戸建て物件でも事前のリサーチが欠かせません。

 

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※本連載は、宮崎俊樹氏の著書『空き家は使える!戸建て賃貸テッパン投資法 2ndエディション』(技術評論社)から一部を抜粋、編集したものです。

空き家は使える!戸建て賃貸テッパン投資法 2ndエディション

空き家は使える!戸建て賃貸テッパン投資法 2ndエディション

宮崎 俊樹

技術評論社

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