(※画像はイメージです/PIXTA)
金とビットコインは機能が異なるため、分散投資ポートフォリオ内で共存可能です。金は歴史的に見て特定のディフェンシブ特性を示しており、市場環境の悪化に対するヘッジを提供し、価値貯蔵手段の役目を果たしてきました。一方、ビットコインは、新たなリターンの源泉となる可能性はありますが、ポートフォリオ全体のリスク上昇につながるという代償を伴います。いずれの原資産もフィアット通貨の代替資産(“alt-fiat”)に対する需要の恩恵を受けると思われます。両資産を組み合わせれば、左のテール(金)と右のテール(ビットコイン)に対するヘッジの分散効果が期待できます。なお、本稿はステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの3名のストラテジストによる共同執筆です。
ボラティリティ:ビットコインの潜在的リターンの代償
ビットコインのリターンは誕生以来これまで一貫性を欠いていますが、それでもビットコインを投資ポートフォリオに組み入れる最大のメリットはそのリターンです。以下の図表がその理由を示しています。
ビットコインのボラティリティは、ここ数年で正常化し始めたものの、一貫して株式や金の数倍で推移しています。この高水準のボラティリティは、極めて大幅な利益を生み出す可能性がありますが、同時に、このようにボラティリティが高いゆえに、ビットコインは多くの投資家にとって組み入れがたい資産となっています。金はポートフォリオに極めて高い安定性を提供してきました。そして、たとえ小幅なアロケーションでも、ビットコインの潜在的リターン余地を残しつつ、ポートフォリオ・リスクを相殺できます。
結論
図表4では、伝統的な60/40ポートフォリオ(株式にはS&P500指数、債券にはブルームバーグ米国総合債券指数を使用)を起点とし、次の3つのオルタナティブなアロケーションを追加した場合の影響を検証しました:
組入比率5%でビットコインを追加(その分、株式の配分を削減)、組入比率5%で金を追加(その分、債券の配分を削減)、ビットコインと金の両方を組み入れたポートフォリオ。言うまでもなく、ビットコインを組み入れることで全体のパフォーマンスは大幅に上昇します(年平均成長率は18.8%、これに対して伝統的な60/40ポートフォリオは10%)※9。
しかし、より興味深いのは、ビットコインと金の両方を組み入れたポートフォリオは、他の3つのポートフォリオをアウトパフォームするだけでなく、ビットコインのみのバージョンより最大ドローダウンが限定される点です。
同じく注目したいのは、株式・債券部分を減らし、ビットコインの組入比率を5%に保ち、そして金のアロケーションを増やした場合、リターンの年率標準偏差が低下するなかポートフォリオは依然として力強いパフォーマンスを示す点です※10。
ビットコイン、そして仮想通貨市場全般は今後も定着しそうです。ジーニアス法のような有利な規制法の成立により、仮想通貨市場の合法性がさらに確固たるものとなり、同市場の問題点とされてきた激しい値動きは抑えられる可能性があります。価値保存手段として数千年の歴史を持つ金は、隠れた市場リスクや金を裏付けとする上場投資信託(ETF)に対する需要などの追い風に依然として支えられ、年初来でビットコインを約24%アウトパフォームしています※11。ビットコインと金は、極端な価格変動を抑えつつポートフォリオのパフォーマンスを改善することで、お互いを補完できます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください。
Aakash Doshi(Head of Gold Strategy)、Mohanad Abukhalaf (Gold Strategist)、Diego Andrade(Senior Gold Strategist)
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ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントは、約半世紀にわたり、機関投資家、金融プロフェッショナル、そして個人投資家に、より良い成果をもたらしてきた。
インデックス運用やETF(上場投資信託)分野における早期からの取り組みを含め、同社の投資手法は、市場に裏付けられた運用ノウハウと、投資家ニーズへの継続的な対応を基盤としている。
2025年6月末時点において、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントが関与する運用資産残高は5兆米ドルを超えており、60カ国以上の顧客に対してサービスを展開している。その中には、グローバル規模での戦略的パートナーシップを通じた提供も含まれ、コスト効率に優れた幅広い投資手段を提供している。ETFの運用資産総額1兆6,898.3億米ドルを含み、そのうち約1,160.5億米ドルは、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ・ファンズ・ディストリビューターズ・エルエルシー(「SSGA FD」)がマーケティング・エージェントを行っているSPDRの金の資産となっている。SSGA FDはSSGAの関連会社で、すべての運用資産残高は監査前の数値。
なお、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントは、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社が行う資産運用関連業務のブランド名である。
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連載【ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント】金市場を徹底分析
〈注釈〉
※1 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025. Note: “President Nixon closed the gold window in 1971” refers to the suspension of US dollar convertibility into gold for foreign governments and central banks on August 15, 1971, which effectively ended the Bretton Woods system of fixed exchange rates and marked the beginning of the modern fiat currency era.
※2 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025.
※3 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025.
※4 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025.
※5 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025.
※6 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025.
※7 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025.
※8 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025.
※9 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025. Note: Please see glossary below for methodology used.
※10 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025.
※11 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/23/2025.
★1 出所:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、ブルームバーグ・ファイナンスL.P. 2025年8月31日時点。相関係数は2つの変数の間の線形関係の強さと方向性を示す指標です。1つの変数の平均値からの偏差が別の変数の平均値からの偏差と関係する度合を測定するもので、ゼロは相関性がなく、1は完全な相関関係にあることを示します。使用指数:日本:MSCIジャパン指数、米国大型株:S&P500指数、米国小型株:ラッセル2000指数、先進国:MSCIワールド指数、グローバル:MSCIオール・カントリー・ワールド指数、欧州・オーストラリア・極東アジア(EAFE):MSCI EAFE指数、アジア太平洋(除く日本):MSCIパシフィック(除く日本)指数、新興国市場:MSCI新興国市場CAD指数。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。
★2 出所:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、ブルームバーグ・ファイナンスL.P. 2025年8月31日時点。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。
★3 出所:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、ブルームバーグ・ファイナンスL.P. 2025年9月22日時点。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。
★4 出所:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、ブルームバーグ・ファイナンスL.P. 2025年8月31日時点。ポートフォリオのリターンは仮想ベースであり、毎月リバランスされるアロケーションに基づいています(株式にはS&P500指数、債券にはブルームバーグ米国総合債券指数、金には金のスポット価格[XAUUSD]、仮想通貨にはビットコイン[XBTUSD]を使用)。インデックスのリターンには、すべての収益項目、損益、配当の再投資が反映されています。インデックスのパフォーマンスは、SSGAが運用するいかなる商品のパフォーマンスも反映していません。リターンは特定の商品のものではありませんが、図表4で詳述した組入比率に従って、図表4に記載した構成指数の実際のパフォーマンス・データを数学的に組み合わせることで算出しています。仮想混合ポートフォリオのパフォーマンスは、取引費用やリバランス費用を想定していないため、実際の運用成果は上記と異なります。投資リターンと元本価値は変動しますので、売却時に利益または損失が生じる可能性があります。現在の運用実績は上記の実績を上回っている/下回っている可能性があります。上記の情報は説明目的のみです。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。
〈用語集〉
金のスポット価格…スポット市場における金の価格。国際的通貨コード「XAU」で表記される、1トロイオンス当たりの金価格。米ドル建て。
図表1で使用している指数…日本:MSCIジャパン指数、米国大型株:S&P500指数、米国小型株:ラッセル2000指数、先進国:MSCIワールド指数、グローバル:MSCIオール・カントリー・ワールド指数、欧州・オーストラリア・極東アジア(EAFE):MSCI EAFE指数、アジア太平洋(除く日本):MSCIパシフィック(除く日本)指数、新興国市場:MSCI新興国市場CAD指数。
図表4の方法論…ポートフォリオのパフォーマンスは、ブルームバーグから入手したデータ(株式にはS&P500指数、債券にはブルームバーグ米国総合債券指数、金には金のスポット価格[XAUUSD]、仮想通貨にはビットコイン[XBTUSD]のそれぞれ月次データを使用)をもとに算出した仮想ベースのバックテスト済みインデックス・リターンに基づいています。基本の60/40ポートフォリオを構築し、それをもとに変化を加えた数種類のポートフォリオ(株式の配分を減らしてビットコインを組入比率5%で追加したポートフォリオ、債券の配分を減らして金を組入比率5%で追加したポートフォリオ、株式・債券部分を比率に応じて減らし、金とビットコインをともに組入比率5%で追加したポートフォリオ)を比較しました。ポートフォリオは固定された組入比率を維持し、月に1回、実質的にリバランスを実施しました。過去の実績は、将来の投資成果を保証するものではありません。仮想ベースのバックテスト済みパフォーマンスは例示のみを目的としており、いかなる商品のパフォーマンスも反映していません。
ボラティリティ…市場指数または証券の価格が上下に変動する傾向を表わします。ボラティリティは通常、リターンの年率標準偏差で表されます。現代ポートフォリオ理論では、ボラティリティが高い証券は一般的に損失が発生する可能性が高く、リスクが高いと見られます。
ジーニアス法…米国ステーブルコインの国家的イノベーションの指針と確立法の略。2025年7月18日に成立し、ステーブルコイン(価値の安定を目的とした暗号資産)に関する初の包括的な規制枠組みを確立しました。この法律では、ステーブルコインの発行者に対し、流動性資産による100%の準備金の保有、月次の準備金情報の公開、そしてマネーロンダリング防止(AML)および消費者保護規則の遵守を義務付けています。また、連邦準備制度理事会(FRB)や通貨庁(OCC)などの期間に規制監督権限を付与し、発行者が破綻した場合にステーブルコイン保有者の返済を優先することが定められています。
【ご留意事項】
本書は、投資の推奨や投資アドバイスを意図したものではなく、そのようなものとして依拠されるべきではありません。
本稿に示されている見解は2025年9月23日時点のSPDRゴールド戦略チームの見解であり、市場やその他の状況によって変わる場合があります。本資料には、将来の見通しと見なされる可能性のある記述が一部含まれています。その様な記述は、将来のパフォーマンスを保証するものではなく、実際の結果や展開はこれら予想とは大きく異なる場合がある点にご注意ください。
提供された情報は、投資助言に該当するものではなく、そのようなものとして依拠されるべきではありません。本情報は、有価証券の購入の勧誘または売却の申出とみなされるべきものではありません。本情報は、投資家の特定の投資目的、戦略、税務上の地位または投資期間を考慮したものではありません。ご自身の税務・財務アドバイザーにご相談ください。
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過去の実績は、将来の投資成果を保証するものではありません。
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8526770.1.1.APAC.RTL Exp date:10/31/2026