分散効果を高め、変動リスクを抑える「金」
金は株式や債券と異なる動きをする傾向があり、ポートフォリオに組み入れることで分散効果が高まり、投資ポートフォリオ全体が市場の価格変動の影響を受けにくくなる可能性があります。
加えて、金融市場が混乱している状況でも資金の逃避先として選好される傾向にある金は、危機時の備えとしての性質も持ち合わせています。
実際の分散投資は米国株式と金だけではなく、国内外の株式や債券を用いて構成されています。例えば代表的な公的年金基金は基本ポートフォリオを国内債券、外国債券、国内株式、外国株式にそれぞれ25%ずつ振り分け、各資産において一定の乖離(かいり)許容幅を設けて運用しています。
そこで過去20年分のデータを使い、伝統的な資産を用いた仮想ポートフォリオに金を追加した場合の潜在的な結果を分析しました。
金を除いた基本の仮想ポートフォリオとして、国内債券、外国債券、国内株式、外国株式にそれぞれ25%ずつ配分(ポートフォリオA)。そこから金を5%(ポートフォリオB)、10%(ポートフォリオC)、15%(ポートフォリオD)と加え、各資産の割り当てを均等に減らしたケースを検証しました。
また、金は国際市場でドル建てで取引されており、円で投資をする日本の投資家は為替相場の価格変動の影響を受けることから、こうしたリスクの回避(ヘッジ)の有無についても分析しました。
金の割合を増やすほど、収益率は高まる
過去20年のデータを用いた検証によると、為替リスクをヘッジしない円建ての金を組み入れた場合、年率リターンは金の比率が0%で5.61%、5%で6.01%。10%で6.41%、15%で6.80%と収益率が高まる傾向がみられました。
ポートフォリオ全体がボラティリティ(価格の上下への変動)によってさらされる年率リスクは金の比率が0%で9.95%、5%で9.68%、10%で9.47%、15%で9.33%と10%まで割り当てを増やすなかで、ポートフォリオのリスクが低減する傾向がみられます。
米ドル・円相場の変動リスクをヘッジした金を組み入れた場合でも、年率リターンは金の比率が0%で5.61%、5%で5.87%。10%で6.11%、15%で6.34%と収益率が高まる傾向がみられました。
また年率リスクは金の比率が0%で9.95%、5%で9.41%、10%で8.94%、15%で8.57%とポートフォリオのリスクが低減する傾向がみられます。


