(※写真はイメージです/PIXTA)

テレワークの普及、物価高、自然志向の高まりなどを背景に、「畑のある暮らし」「のんびりした環境で子育てをしたい」といった理由で、都市部から地方に移る人は少なくありません。一方で、理想と現実のギャップに戸惑う声も多く聞かれます。特に“地域のつながり”に対する価値観の違いや、生活スタイルの衝突から、ご近所トラブルに発展するケースもあります。本記事では、そんな現実に直面した40代夫婦のエピソードを通して、「地方移住」の課題を考えます。

移住支援制度と“孤立”のリスク

地方自治体によっては、「空き家バンク」「移住支援金」など、移住者向けの補助制度を設けている地域も多くあります。ただし、移住後の暮らしに関しては“自己責任”。トラブルや孤立に直面しても、行政が介入できるわけではありません。

 

また、移住支援の現場では「地域住民側の受け入れ体制」も課題とされています。新しい住民を歓迎する自治体がある一方で、「どうせすぐ出ていくでしょ」「都会の人は面倒」という偏見が根強く残っている地区もあり、移住者が精神的に追い込まれるケースもあるのです。

 

「都会に戻ることも考えました。でも、畑仕事をしていると、やっぱり好きだなと思えて…」

 

美沙さん夫妻はその後、ご近所との摩擦をきっかけに、町内の“移住者向けサロン”に参加するようになりました。地元出身ではない移住者同士が交流できる場があり、悩みや失敗談を共有できることで、地域との距離感を少しずつつかめるようになったといいます。

 

「“自分が合わせすぎず、でも礼は尽くす”。そのバランスが大事だと気づきました」

 

「自然に囲まれた暮らし」「畑のある生活」は、決して幻想ではありません。しかし、それを支えるのは、やはり“人とのつながり”です。

 

地方移住は、住宅や土地の問題だけでなく、地域コミュニティという“見えないインフラ”にどう関わるかが問われます。夢だけでなく、現実も見据えたうえでの移住が、後悔しない選択につながるのかもしれません。

 

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