「実家を売ってくれ」義弟からの一通のメッセージ
東京都在住の森下香織さん(仮名・52歳)は、昨年亡くなった母の実家に現在も住んでいます。母は85歳で亡くなる直前まで自宅で暮らしており、香織さんは週に数回、家事や買い物、病院の付き添いなどを続けていました。
妹の恵美さん(仮名・50歳)は結婚して地方に暮らしており、介護への関与はほとんどありませんでした。香織さんはそれを責めるつもりはありませんでした。「それぞれの生活がある」と理解していたつもりでした。
しかし、母の四十九日が終わって落ち着いた頃、突然妹の夫(義弟)から連絡が届きます。
「実家、売って現金で分けましょう。家に住み続けるのは不公平です」
香織さんは思わずスマホを握りしめました。
「は? なんであなたが言うの?」
義弟は、強く主張してきました。
「相続は法律で決まっていることなので。感情ではなく公平にやりましょう」
その口調は、あまりに一方的でした。
ここで重要なのは、義弟には相続権がないということです。法定相続人となるのは、「配偶者」と「子ども」。つまり、この場合の相続人は 姉妹2人だけです。
しかし現実では、配偶者(義弟)が実質的に交渉の前面に出てくることは珍しくありません。本人より配偶者のほうが積極的で、感情的な対立が加速するケースも多くあります。“公平に”という言葉が、実は“自分たちの生活基盤を守りたいだけ”という場合もあります。
とはいえ、香織さんは、母の生前2年以上にわたって介護を続けてきました。
●週3〜4日の訪問
●役所や病院の手続き
●食事・掃除・買い物
●夜中の呼び出し
「正直、仕事も自分の生活も削ってやりくりしていました。でも母が好きだったし、誰かがやらなきゃいけないと思って…」
対して、妹は年に2回帰省するだけ。それでも、法律上は「相続分は1/2ずつ」です。ここが多くの家庭で揉める最大のポイントです。
