(※写真はイメージです/PIXTA)

親が介護施設へ入居する――それは、家族にとっても一つの節目です。在宅介護からの卒業、あるいは家族の介護負担の軽減といった側面がある一方で、本人にとっては「家を出る」という心理的なハードルがつきまといます。「なるべく自宅で過ごしたい」という思いを持っていても、さまざまな事情で施設を選ばざるを得ないのが現実です。

施設に入る前に、“人生の整理”をしたかった母の気持ち

澄江さんは翌日、予定どおり施設に入所しました。入所後は環境の変化で少し混乱する場面もあったそうですが、スタッフとの信頼関係ができはじめ、少しずつ落ち着きを取り戻しているといいます。

 

「正直、親の死について考えるのは辛い。でも、母が“最後のお願い”として託してくれたことで、逆に心の準備ができた気がします」

 

和也さんは現在、その封筒と手紙を大切に保管しており、同時に自分自身も「エンディングノートを用意しておこう」と考えるようになったそうです。

 

人生の終わりをどう迎えるか――それは年齢に関係なく、誰にとっても重要なテーマです。介護施設入所や終末期のタイミングでこそ、親と子の間で「想い」を伝え合う機会が生まれることもあります。

 

「これが最後のお願い」

 

そう託された封筒には、金額以上の意味が込められていました。準備とは、誰かに“迷惑をかけないため”だけでなく、“安心して任せるため”の行為なのかもしれません。

 

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