利上げの判断材料は労使の交渉姿勢、12月の追加利上げの可能性を残す
展望レポートにおいて、経済や物価の見通しは前回7月から概ね不変でしたが、植田総裁は会合後の記者会見で、「(経済や物価の)見通しが実現する確度は少しずつ高まっている」と評価し、追加利上げの可能性について言及しました。
追加利上げの主な判断材料としては、①来年の春闘での賃上げ動向、②米国経済の動向、を挙げ、①については、企業の賃金設定スタンスや具体的な賃上げの動向を分析したいとの従来の考えを示しつつ、「来年の春闘に向けての労使の交渉姿勢がどのようなものになるかも含めてもう少しデータを見たい」、「初動のモメンタムがどういう感じになるかというところをもう少し情報を集めたい」と述べました。
②については、「米国経済の下方リスクは7月に見ていたころと比べるとやや低下した」と指摘した上で、「それでもアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は雇用の下方リスクに配慮して利下げを行った。政府閉鎖もあり、予想以上の負のニュースが出てこないか確認したい」との考えを示しました。
こうした発言は利上げタイミングを推し量る上で重要な手掛かりになると考えられます。植田総裁は企業の賃金設定スタンス、来年の春闘における賃上げの動きについて、必ずしも春闘全体をみる必要はなく、その「初動のモメンタム」により判断できるとしています。つまり、全国の支店網を通じて随時蓄積されるヒアリング情報や、労働組合や企業経営者の賃上げに向けたスタンス、賃上げの原資となる企業収益の状況などを分析した上で、早ければ12月にも追加利上げに踏み切る可能性を示唆したと考えられます(図表3)。
また、植田総裁は、先行きを見通す上でこれまでたびたび懸念を示してきた米国経済に関して、「(企業の賃金設定スタンスを)判断できそうになるタイミングまでに、例えば米国で大きな負のニュースが出てくるかどうかを見ていきたい」と述べています。米国経済について、想定外の大きなショックなどがなければ追加利上げを妨げるものではないと判断していると解釈できます。
関税政策が米国経済に与える影響は当初想定していたほど大きくなさそうであり、米国経済の減速が日本経済に与える影響も限られるとの認識が強まっていることが背景にあるとみられ、企業の賃金設定スタンス、賃金と物価の相互参照的な上昇の動きそのものを、先行きを見通す上で最も重要なポイントに位置付けたとみられます。
市場が織り込む利上げ確率をみると、利上げ時期が12月に前倒しされるとの見方は今回の決定会合後に高まったことを示唆しています(図表4)。
東京海上アセットマネジメント
※上記は過去の実績及び将来の予想であり、将来の動向を示唆・保証するものではありません。
※上記は作成日時点の弊社の見解であり、今後、予告なく変更することがあります。
※本記事は東京海上アセットマネジメントの「Market Report 2025年10月31日」をTHE GOLD ONLINE編集部が文章を一部改変しております。
※全文は「Market Report 2025年10月31日」をご確認ください。
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