孤独な女性が課金した結果…「何をやっていたんだろう」
市営団地で一人暮らしをする田中美智子さん(66歳・仮名)。 若い頃に離婚し、子どもはおらず、両親もすでに他界。頼れる親族は車で1時間ほど離れたところに住む妹一家だけです。
月8万円の年金に加えて、週4日・清掃パートで得る収入が月7万円。派手な暮らしではないけれど、工夫すればやっていける」――そんな静かな日常でした。けれど、美智子さんには密かな不安がありました。
「この先、ずっと一人で生きていけるのだろうか」
休日に誰とも話さない日が続くと、心の奥にぽつりと孤独が沈むのを感じました。 そんなとき目に留まったのが、スマホの無料占いサイトでした。
「人生、少しはいいことあるかな」「金運が上がって宝くじでも当たらないかな」
そんな軽い気持ちで利用し始めたといいます。最初は無料で楽しむだけ。しかし、占い師とのメール鑑定には有料ポイントが必要でした。
「普段ほとんど他人とのやりとりがないので、返信が来るのが嬉しくて。それに金運が上がるからと言われて、つい……」
1回のやりとりは数百円~1,000円ほど。「このくらいならいいか」と思える金額でした。しかし、毎日サイトからメールを送るのが習慣になり、 スマホを開く時間が増え、 気づかぬうちに離れられなくなっていました。
やり取りの回数で料金が加算されるため、終了のタイミングがわかりにくく、つい追加で送信してしまう構造です。そうした積み重ねで、ポイントを追加購入、また追加購入。詳細に占ってもらう特別鑑定なども続けたことで、あっという間に課金額の合計は70万円を超えてしまいました。
長い老後に備え、コツコツ貯めてきた900万円の貯蓄。普段家計簿をつけない美智子さんが、ふと計算したときにその額に改めて驚いたといいます。
「いつの間にか、相手を“先生”って呼んで、心の拠り所にしていました。ですが、私にとって70万円なんて本当に大金。会ったこともない人なのに、いったい何をしていたんだろうって。お金を返してほしいですが、どうも無理みたい」
ようやく目が覚めた美智子さん。占いは封印すると心に誓い、その後、地域の体操教室に顔を出すようになりました。
「腰が重い私にとっては勇気のいることでしたが、行ってみたら楽しいですね。生徒仲間とちょっとした会話をするだけで、気晴らしになります。直接話すほうが、ずっといい」と笑顔で話します。
