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腰掛けのつもりで実家の豆腐屋に戻ったら……
2000年7月末に国家公務員を退職し、佐賀へ戻りました。そして同年8月下旬、取締役営業部長として実家の豆腐屋に入社します。父が社長を務める会社であれば、経営の基本を実地で学ぶには最適であり、起業に向けた準備としてふさわしいと考えたからです。1年程度勤務したのちに独立する予定であり、あくまで一時的な関わり――いわば「腰掛け」のつもりでした。
退職の決意を固める前に両親へ相談したところ、父は「腰掛けでもいいから戻ってくればいい」と喜んでくれました。一方で、母には「お願いだから帰ってこないで」と涙ながらに言われました。母としては、安定した国家公務員の職を辞めてほしくなかったと思いますし、業績不振の豆腐屋に息子を巻き込みたくないという気持ちもあったはずです。もちろん父も、私を心配していなかったわけではないと思いますが、それ以上に会社を立て直したいという経営者としての切実な思いが勝ったのだと今では感じています。私もまた、あくまで短期間とはいえ、少しでも家業の力になれればという思いで帰郷を決めたのです。
ところが、いざ実家に戻ってみると、経営の実情は私が想像していた以上に深刻なものでした。月末が近づくたびに母親は資金繰りに奔走し、心身ともに疲弊している様子が明らかでした。私が軽い気持ちで「少しでも役に立てれば」と考えていたこと自体、甘い認識だったと痛感させられました。
そこで、まず私が取りかかったのは、会社にある帳簿類を一つ残らずかき集め、その数値をパソコンに入力して経営の実態を明らかにすることでした。入社してから1カ月間は、その作業に没頭しました。調べていくと、売上に匹敵するほどの債務を抱えており、金利の支払いだけでも驚くほどの金額になっていました。さらに問題だったのは、キャッシュフローが回っておらず、借入をしなければ月末の支払いにも事欠くような切迫した状態にあったことです。
詳しく話を聞いていくなかで、私がそれまで知らなかった重大な事実がいくつも明らかになりました。なかでも衝撃的だったのが、主要取引先であった3年前に倒産したスーパーとの取引額が、全体の売上の約4割を占めていたという点です。そのスーパーが倒産したこと自体は把握していましたが、経営への影響がこれほど深刻だったとは想像していませんでした。
さらに、失われた売上を補うために新規の取引先を開拓していたものの、そこにも問題がありました。支払い期日を守らず、資金回収が不安定な企業も含まれていたのです。通常の経営状況であれば、こうした取引先とは取引をしないのですが、少しでも売上が欲しい当時の状況では、それすらもままなりませんでした。
さらに借入状況を詳しく確認すると、すでに銀行からの融資が困難となり、消費者金融にも依存していることが分かりました。返済が一部滞っていたことから、督促の電話も頻繁にかかってくるような状態で、もはや銀行からも信用を失いつつありました。資金繰りは極度に逼迫しており、いつ資金ショートを起こしても不思議ではない、まさに瀬戸際にあったのです。
